腹黒美人は鮮度の証、サヨリ
サヨリ(細魚)は、文字通り魚体が細長いことが、
名前の由来です。
下あごが特に長く伸びているのも特徴です。
これは、表層近くにいるプランクトンや、水面に浮かぶ昆虫などを、
受けるようにして捕獲するのに適した形です。
北海道から台湾あたりの沿岸部に広く分布しています。
地方によって呼び名がいろいろあります。
山陰では「クスビ」、
和歌山では「ヤマキリ」、
大阪(堺市)では「サエロ」、
茨城では「ヨド、サイレンボウ」、
東京では大型のものを「カンヌキザヨリ」
と呼ばれています。
味は淡泊な白身魚で、脂肪がほとんど無く、
たんぱく質が豊富に含まれています。
今では高級魚として、お刺身、お寿司、酢の物、昆布締め、
天ぷら、吸い物、塩焼きなどに使われます。
素干し、みりん干しなどの加工品にもされます。
細長くスマートな魚体と銀色が冴えて、
魚界の麗人、美人といわれます。
ただ、その見た目にそぐわず、腹を割くと腹の内側の膜の色が真っ黒で、
そのため、昔は「腹黒い人」の代名詞としても使われました。
「サヨリのような女性」というと、
「美人なのに腹黒い女性」の意味で、サヨリにとっては
あまりありがたくないたとえにされたりします。
この色の変化で鮮度が分かります。
劣化すると、この黒色が茶色に変色してきます。
つまりサヨリの腹の中が黒いのは、生きのいい証なのです。