鮭・鱒 – さけ・ます – salmon,trout

鮭(さけ)・鱒(ます)の特徴

一般的にいわれる鮭は、サケ科に属していて、鱒も同じ仲間になります。

「しろざけ」がその代表格ですが、この「しろざけ」もその成長の度合いや漁獲時期等で「秋鮭」・「ときしらず」・「めじか」・「けいじ」などと商売する上での呼称が加わります。

産卵期の雄は、鼻が鉤型に曲がっているので、「はなまがり」とも呼ばれています。北海道・青森県・秋田県などで「あきあじ」岩手県・宮城県などで「おおまなこ」東京では「しゃけ」などとも呼ばれています。

鮭と呼ばれて食卓に並ぶものには、「しろざけ」の他、「べにざけ」・「ぎんざけ」・「さくらます」・「からふとます」・「ますのすけ」が含まれます。いずれも成長にともない川から海に降りて(降海型)成熟産卵出来るまで海で餌を食べ成長します(索餌海遊)。ただ、これらの種類の中でも海に降りないで生活するものもいて(陸封型)例えば「べにざけ」の場合は「ひめます」、「さくらます」は「やまめ」といわれるようになり降海型とは形態が違ってきます。

世界の鮭の種類は70種類もあるそうです。

鮭(さけ)・鱒(ます)の旬

一年中出回っていますが、白鮭が産卵のため川を遡上する秋が旬です。ただ、川の上流にのぼるほど味がおち、川に上る前の九月下旬ごろまでにとれた鮭がおいしいと言われています。

春から夏にかけて北海道沖でとれる鮭を「時ざけ」、産卵前の脂がのった鮭を「秋ざけ」といいますが、どちらも「しろざけ」のことです。

種類別で言うと、白鮭、銀鮭、樺太ますは秋。キングサーモン、桜ますは春。紅鮭、琵琶ますは夏になります。

鮭(さけ)・鱒(ます)の種類

白鮭(しろざけ)

(別名)しゃけ
その身の色が他の種類の鮭に比べて淡いピンクなので和名で白鮭と呼ばれます。北海道や東北地方の河川で生まれ、北太平洋を回遊して4年前後で産卵の為に生まれた川に戻ってきます。北海道では9月頃から、本州には11月から12月を中心に遡上してきます。白鮭は人工孵化の主流で来遊は年々増加しています。主に秋に捕獲されることから「秋味(あきあじ)」と呼ばれていますが、5~6月に獲れるものもあり「時知(ときし)らず」・「時鮭(ときさけ)」と呼ばれ、味も上質なことから珍重されます。河に戻る直前は銀白色の体色をしていて「銀毛」と言い、最高級とされますが、川を遡上する頃には黒、黄、桃色の混じった雲状紋の婚姻色が出てきます。これを「ぶな化した」と言い、商品価値は産卵に近づくほど下がります。産卵期の雄は、体高(腹からせびれまで)が高く鼻が曲がっています。「鼻曲がり」とも呼ばれる所以(ゆえん)です。

鮭児(けいじ)

所属はアムール川の夏サケ(7~8月に遡上する)で、10月下旬から11月中旬にかけて知床から網走付近で捕獲される脂ののった若い白鮭のことです。卵巣、精巣が未成熟なため筋子も白子も入っていません。魚体としては小さ目ですが、まぐろのオオトロのように魚体いっぱいに脂がのっており、高級寿司ネタ等に使われます。1万本に1~5匹の割合しか獲れないため、幻の鮭と呼ばれています。最近ではメディアでも取上げられることが多く、有名になっています。

銀鮭(ぎんざけ)

(別名)ぎんます
もともと日本にはいない種類の鮭で、国内では主に養殖魚としてよく知られており、海面養殖で育てて出荷します。 銀色の体色が美しく日本では「ぎんざけ」と呼ばれていますが、もともとは北海道の尻別川など、ごく一部の川に稀に遡上するだけで、国内で漁獲される数は非常に少ないものでした。1970年代に北米から卵が移入されるようになり、次第に養殖が盛んになりました。味は良く、缶詰や燻製にも利用されます。

樺太鱒(からふとます)

(別名)あおます、せっぱります、ほんます、オホーツクサーモン
名前は、樺太に大量に遡上したところから由来するそうです。「せっぱります」「青ます」「本ます」とも呼ばれ、いわゆる「ます」として売られているのが、この樺太ますです。降海するサケ科の中では小型で全長60~70センチ、2kg前後の個体が多く、岩手県北部から樺太、カムチャッカ、アラスカ等に広く分布します。肉質はかなり柔らかく味はしろ鮭より劣るので、缶詰にされることが多く、日本での鮭缶の原料はほとんど樺太ますです。マスいくら、小粒いくらとして、卵も多く流通しています。
知床産のものは、回帰してくる時期が他の地域よりも早いため脂ものっており、オホーツクサーモンとして人気があります。

紅鮭(べにざけ

(別名)べにます
産卵期が近づくとオスは体全体が赤くなることが名前の由来で、食用にするサケ・マスの中ではもっとも身が紅く、食用魚として最高位にランクされています。産地は、北米からカナダ、アラスカ、カムチャッカ方面です。国内では陸封型の「ひめます」が北海道阿寒湖、チミケップ湖に分布しています。

鱒助、鱒之介(ますのすけ)

(別名)キングサーモン
ロシアに回帰する一部が北海道で漁獲されますが、極めて少ないです。 「すけ」とは「さけ」の語源であり、また、地方によっては鮭の中でも特に大きなものをこう呼びます。また、「すけ」は「介=大将」の意味であり、さけ・類中最大となる本種が「鱒の介(大将)」であるからという説もあります。 日本の食卓では「キングサーモン」と呼ばれ塩漬けの切り身やスモークサーモンに加工されて食用されています。20kgを超えるような大物もあるぐらい魚体が大きく、脂ものって味も良いです。

桜鱒(さくらます)

(別名)まます、いたます、ほんます、えのは
やまめの降海型を桜ますといいます。体調60cm暗青緑の背に銀白の腹、背中に黒点が散在しているのが特徴です。ますと呼ばれるもののな化では姫ますと並んで味が良いです。富山の「ますずし」に使われているのが桜ますです。

虹鱒(にじます)

(別名)しょま
1877年アメリカから中禅寺湖へ移入され、養殖ますとしては一般的で中心的存在です。放流されたものも自然繁殖していて、特に北海道で多く見られます。うまみにあるあっさりとした白身は柔らかで骨ばなれもよく、塩焼きやムニエル、フライなどで食されます。

山女魚(やまめ)

「桜ます」の陸封型を「やまめ」といい、香りこそあゆに劣りますが味は川魚の中で一番良いです。体調30cmほどで、8~10個の斑紋と黒い斑点が特徴です。かつては幻の魚と言われましたが、今では各地で養殖や放流が盛んです。天然物の旬は3月から初夏で特に初夏に味がのり美味です。産卵期の10月から12月は禁漁期間となります。

天魚、雨魚(あまご)

一生川に留まる陸封型は「あまご」といい、川に溜まってから海へ出る降海型は「さつきます」といいます。降海する比率は一生川に留まる陸封型くらべかなり少ないです。「やまめ」との違いは体側から背面にかけて朱紅点が散在するかしないかで見分けられます。旬は春と秋です。特に6~7月にとれるものは大変美味です。姿を生かした塩焼きやから揚げ、フライ、ムニエルなどにします。

琵琶(びわ)ます

琵琶湖特産のますで、このあたりでは、単に「ます」と呼ばれます。湖で3~4年過ごしたのち、産卵のために川をさかのぼります。産卵期は10~11月中旬で、6~7月に湖でとれるものはたいへん美味です。

岩魚(いわな)

「いわな」の仲間といわれているものには、「にっこういわな」、北海道の「オショロコマ」、「オショロコマ」の降海型である「ドリーバーデン」、東北~北海道にかけて多い「あめます」、中国地方のゴギと北海道の「みやべいわな」、「かわます」と「レイクトラウト」などがあります。天然物の旬は夏ですが、市場に出回るものはほとんど養殖物です。塩焼きやから揚げ、ムニエルなどにします。

冬魚(いとう)

(別名)おへらいべ
これまで日本最大の淡水魚だった「いとう」も自然環境の悪化や釣人の乱護などによって年々小型化したらしいです。しかし、近年増殖が成功して大きい「いとう」を釣堀で釣らせているところもあるそうです。肉はあまり美味くなく、市場にはほとんど出回りません。

鮭(さけ)・鱒(ます)の加工品

いくら

いくらは鮭の成熟卵を一粒一粒ほぐし、塩水や醤油で味付けし、一昼夜程寝かせて味をよくなじましたものです。透明感があり、弾力のあるものが良質です。
いくらとはロシア語で「魚の卵」という意味で、日露戦争の時にロシア人がキャビアの代用品として作ったのがはじめです。
主な栄養素はたんぱく質で、そのほかにビタミンAやビタミンB群、ビタミンEなども含みます。ただし、熱量や塩分が高めです。
塩蔵品とはいえ、過信は禁物です。生物同様、なるべく早く食べるのが無難です。二~三日中に食べれない時は、密閉容器に入れて冷凍庫へ入れます。約三週間程もちます。解凍は冷蔵庫でゆっくりと行なってください。

すじこ

すじこは鮭の未成熟卵などを卵のうに包まれたまま、そのままの形で塩水や醤油に浸け込んで味付けした後、専用の熟成箱に入れて重しをし、数日間熟成させて味を調えたものです。光沢と弾力のあるものが良質です。塩水に浸して粒をほぐしてから使用します。
栄養や保存に関してはいくらと同じです。

新巻鮭(あらまきざけ)

新巻鮭と呼ばれる一本物の塩鮭をつくるには、箱切と山漬という2つの異なった製法があります。いずれの方法も、まずは前処理として秋鮭の内臓と鰓(えら)を取り除き、きれいに洗います。その後、大きさ別に分け、粗塩をまぶします。

箱切の場合はこの段階で木箱に入れてすぐに急速冷凍します。そのため、箱切の新巻鮭は、解凍直後だと塩がまったく効いていません。そのまま、塩を洗い流せば、ほとんど生の鮭と変わりないようなものです。このように、箱切では熟成の過程がありませんので、その味は生鮭の塩振り焼きといった風情になります。

これに対して山漬は、多めの塩を魚体にまぶした後、大きな容器の中に積み重ね、その上に重しをのせて、漬物のようにしっかりと塩漬けにします。さらに、毎日これを手がえし(熟成容器内の鮭の位置や向きなどを入れ替える手作業)しながら、1週間から1ヶ月かけて熟成させます。山漬の持つ独特のうまみは、この熟成の過程で創り出されます。(塩をふることによってたんぱく質が分解し、アミノ酸などのうまみ成分が生まれます)その後、多すぎる塩味を抜いたり、干して水分を調整したりと数多くの手がかけられ、完成します。このようにして造られた山漬は、秋さけのもつ本来のうまみに満ち溢れた、新巻鮭の逸品といえますが、多くの人手がかかることや、製造できる時期が限定されるという事情から、限られた数しか造られていません。

形がふっくら整っていて傷が無く、ウロコが銀色ではがれずにかたくついていること、腹は厚く大きく銀白色でやせていないこと、褐色に油焼けしていないのが良品です。箱に「沖」の印があるものは沖でとれたものをすぐに塩漬けにしたもの、「丘」は陸揚げしてから塩をしたものです。

サーモン

鮭を塩漬けにして木材の煙でいぶして燻製にしたもので、色、香り、味の三拍子そろった高級素材です。肉のしまりがよく、脂肪分が適度にあるものが良質です。真空パックになっているものは、脂がにじみ出ていないものを選んでください。そのままオードブルにしたり、サラダやマリネに使います。保存は冷蔵庫に入れ、賞味期限(または品質保持期限)内に食べてください。

冬葉(とば)

秋鮭に軽い塩味を付けて短冊状に割き、冷たい風で干し上げたものです。これを食べやすくスライスしたり、みりんやこしょうで味に変化をつけたり、超薄切りにしてカリッとしたポテトチップスのような歯ざわりにしたりと、様々なバリエーションの冬葉たちが生まれています。

鮭フレーク

鮭の身を焼いてほぐし、炒めて水分を飛ばしたものです。鮭の種類は品物によりますが、シロザケ・ベニザケなどを使ったものが主流です。アスタキサンチンの損失は高いですが、EPA・DHAに関しての損失は微量です。塩分は切身とほぼ同量の100g中に3g程度になります。

鮭缶

鮭を輪切りにし、缶に詰め、圧力をかけて煮たものです。鮭の種類は、カラフトマスが主流です。缶ごと加熱するので、汁ごと摂取すれば、全ての栄養素の損失はありません。骨や皮が食べやすく入っているため、切身では調理しづらいものも缶では簡単に食べる事が出来きます。塩分は甘塩の切身よりも低く、100g中1.0g程度です。

鮭の中骨缶

鮭の背骨部分を缶詰にしたもの。しろざけの主産地、岩手の宮古市で開発されてブームになりました。手軽なカルシウム源として人気です。

ルイベ

北海道の郷土料理のさしみの一種で、ルイベとはアイヌ語で「とけた食物」という意味です。鮭を大きい上身もまま凍らせ、これを薄く切ってとけかかったところを食べます。

鮭(さけ)・鱒(ます)の選び方

皮が銀色にピカピカと光っていて、体が太くてしっかり張った、腹に厚みのあるものが新鮮です。

切り身は色が鮮やかなもの、切り口がしっかりしていて白い年輪のような模様がはっきりしているもの、身のだれていないもの、表面が水っぽくなっていないものを選びます。

えらぶたをあけてみて、えらの色が鮮やかな朱色で、くしの歯状一つ一つがしっかりきれいに並び、くずれていないものが新鮮です。

重さ4kg前後のオスがおいしいといわれています。

鮭(さけ)・鱒(ます)の調理法

鮭は、一尾を丸ごとさばくと、捨てるところはありません。
アラは鍋物用に、切り身は焼き物に、背身はルイベやマリネ等生食用にと、好みに切り分けてまるごと楽しめます。

天然物は寄生虫のアニサキスがついている事があるので生は要注意です。けれどもマイナス20度で24時間以上冷凍したり、酸やアルコールを加えて保存すると寄生虫は死滅します。養殖物はそのまま生食できます。

身が柔らかく身くずれしやすいのでていねいに扱いましょう。薄い包丁を使うのがコツです。

加熱しすぎるとパサパサになるので注意してください。

あらを使う時は霜降りにしてから調理をします。

魚の独特な生臭みの原因はトリメチルアミンという成分です。酒や白ワインをふって臭み抜きをします。ムニエルやフライにする時は牛乳に浸します。あれば、ローリエや香草を入れるとより効果的です。

塩からすぎる「塩鮭」は、焼いてからほぐし、日本酒をひとふりすれば、鮭フレークとして使えます。

鮭の調理法の一般的なもの

焼き鮭、ホイル焼き(ムニエル)、フライ、マリネ、ステーキ、煮込み(シチュー)等

鮭頭部の調理例

氷頭(ひず)なます=頭部軟骨の酢漬け
鮭のアラ煮=サケの全身を丸ごと煮たもの
かぶと煮=文字どおり頭だけを煮たもの

鮭内臓の調理例

中(ちゅう)=胃の塩辛
めふん=腎臓の塩辛

鮭中骨の調理例

中骨の柔らか煮=中骨を圧力鍋で煮たもの

鮭のおろし方

先にうろこを落とし次にエラぶた(エラの付け根部分)に包丁を入れてエラを切ります腹を手前に置き肛門部から頭の方に向かって包丁を入れてひいていきますすじこを取り出し再び腹に包丁を入れて内臓をキレイにかきだし、水洗いをします。背を手前に置きエラを持ち上げながら頭を落とします。背ビレや尾ビレなどを切り落とします。ステーキ用にする場合は胴体部分を好みの厚さに筒切りにします。3枚おろしにする場合は、中骨に沿って包丁を斜にして頭の方から尾の方に背側を切ります。のこぎりで引いて切るようにすると上手におろせます。次に裏に返して同様に中骨の上に沿って包丁を入れます。背肉の一番良い所(ルイベにする部分)を切り落とします。残りはお好みにより切り身状に切分けて下さい。※ちょっと凍っているぐらいのほうが扱いやすいでしょう。
※身は大きいままではなく、あらかじめ2~3つに切り分けてから、それぞれを三枚におろすと比較的楽にできます。

塩鮭の上手な塩抜き法

その1)水で塩抜きする

水3カップにみりん大さじ1、酒大さじ2を加えたものへ好みに応じて2~3時間から1日程度漬けておきます。

その2)酒粕で塩抜きする

酒粕200gを電子レンジで温めて、みりん大さじ1、酒大さじ1、水大さじ2を加えます。鮭に酒粕をからめ、バットなどに入れて冷蔵庫で2~3日寝かせます。粕を取り除いてさっと水洗いしてから網焼きします。塩分が抜けるだけでなくぐんとおいしくなるのでおすすめです。

鮭(さけ)・鱒(ます)の保存法

最近は健康のためか薄塩が多くなってきており、保存には注意が必要です。新巻鮭も以前は保存食ということで、きつく塩をしていたために長期保存ができましたが、現在作られているのは冷蔵や冷凍保存をすることを前提に、塩分を控えているのがほとんどです。2~3日で食べる場合は冷蔵庫でも保存はききますが、それ以上保存したい場合は冷凍庫で保存したほうが良いでしょう。

冷蔵庫で保存

頭に近い、脂身の多い部分は切り身にして冷蔵庫に保存し、数日で食べきります。一切れづつラップに包むか、金属性のバットに並べてラップをかけて保存します。

冷凍庫で保存

尾に近い部分や背の部分は脂が少ないので長く保存できます。ひとかたまりづつ密閉シートに入れるかラップできっちり包みます。塩加減によりますが、家庭の冷凍庫では、1ヶ月以内に食べきります。解凍は使う5~6時間前に冷蔵庫へ。急ぐ場合は室温や電子レンジでの解凍もOK。半解凍くらいがおろしやすいです。

鮭(さけ)・鱒(ます)の栄養・効能

鮭は総合的に栄養価の高い魚です。EPAやDHA、良質なたんぱく質や、魚にはあまり含まれないビタミンAが豊富に含まれています。

鮭の身の赤い色素はアスタキサンチンと呼ばれるカロチン色素のためで、鮭・鱒に特有の抗酸化物質です。

さらに海産物としては珍しいビタミンDも多く含まれます。

これらの他にも、ビタミンB1、B2、ナイアシン、脂質、ミネラルなどがバランス良く含まれたスタミナ食といえます。

血液さらさら、頭も良くなる

すじこやイクラに多く含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)は、血栓を防ぎ、血液をさらさらにして血流をよくするはたらきがあります。中性脂肪や悪玉コレステロールを増やすはたらきもあり、動脈硬化や高血圧、狭心症や心筋梗塞などに効果があります。DHAは脳の発達や知能指数にも関係するといわれ、さらに老化やガンの抑制効果などがあるとの報告があります。EPAはアレルギー症状の緩和に役立ちます。
DHAやEPAは鮭の皮のすぐ下の脂質の部分にも多く含まれています。皮も食べることをお勧めします。

肥満防止

鮭の頭部の軟骨部分には、コンドロイチン硫酸のような糖類も含まれています、コンドロイチン硫酸とは、軟体組織に含まれているムコ多糖類の一種で、体内に入り小腸での脂質・グルコースの吸収を抑制する働きがあります。
また、鮭にはビタミンB2が含まれており、脂質を分解しエネルギーに変えることができます。このビタミンB2が不足すると脂質の分解が上手くいかず、肥満の原因ともなるといわれています。

抗酸化

鮭の身の赤い色素成分は抗酸化物質のアスタキサンチンで、体内で悪玉コレステロールを排除する働きがあります。タイ・キンメダイ・エビ・カニなどにもある色素ですが、エビ・カニは殻の部分に、タイ類は皮の部分に含有されていて、鮭のように身に含有されていないので、鮭の方がより摂取しやすいのです。身にアスタキサンチンが移行しているのは、魚類ではサケ類だけです。さらに、イクラにも抗酸化力のアスタキサンチンが含まれています。

風邪などの予防

鮭には他の魚にはあまり望めないビタミンAが豊富に含まれています。このビタミンAは、鼻、喉の粘膜を強化し、外部から体内に入ってくる病原体をブロックする働きがあるため、風邪の予防、夜盲症、皮膚障害などに有効です。

軟骨化症・骨粗鬆症予防

鮭はビタミンDが豊富な食材です。このビタミンDはカルシウムの吸収を促してくれる栄養素で、骨を作るのに欠かせない栄養素です。不足すると、乳幼児では、脊椎の湾曲やX脚、O脚、成人では、骨軟化症や骨粗鬆症などが起きやすいです。
更に体内でのカルシウムの働きを調節する働きがあるマグネシウムも一緒に摂取すれば、カルシウムをとる上で理想的な組み合わせとなります。カルシウムを多く摂取する一方でマグネシウムが不足していると、血液や筋肉細胞の中にカルシウムが多くなり過ぎて、高血圧や動脈硬化などを招く可能性がある為です。じゃがいもやブロッコリーにマグネシウムは多く含まれています。
また、鮭自体にもカルシウムがあります。カルシウムの働きには、骨格の形成や維持、精神安定作用があります。それにリンも含んでおり、このリンは骨格形成や神経や筋機能を正常化、ビタミンB1・B2と結合し、補酵素となり糖代謝を促進したりします。

タンパク質(コラーゲン)の摂取

タンパク源としてサケを見た場合、豚・牛・鶏肉と比べてほとんど変化の無いアミノ酸スコアを持っています。アミノ酸スコアとは、タンパク質の効果的な摂取度合いを示す数値の事で、鮭の身は100という一番良い数値です。しかも、カロリーも牛・豚・鶏肉に比べて低い数値です。
また、鮭の皮はたんぱく質の一種、コラーゲンでできています。コラーゲンとは、動物の身体の中の結合組織に多く含まれるタンパク質の一つで、身体の形成や機能の正常化に必要不可欠な物質です。体内に吸収されると細胞の代謝を活性化させ、老化防止につながると言われています。

鮭(さけ)・鱒(ます)の民間療法

鮭は昔から、体を暖める食べ物といわれ、胃腸をあたためて血のめぐりを促し、健康増進に役立つため、胃弱、冷え性、体力のない人に良い食べ物と言われてきました。

鮭(さけ)・鱒(ます)の豆知識

母なる河は忘れない
鮭は成熟すると生まれた河川に遡上し産卵するという習性があります。この習性を「母川回帰性」と言いますが、なぜそのような性質を持っているのか詳しくはわかっていません。

白鮭の場合、通常4年間海を回遊した後、生まれた川の記憶をたどって回帰してきて産卵します。生まれた河川にどうして戻ることができるのかということについてもその仕組みは解明されていませんが、おもしろい実験報告があります。

いったん川に遡上した鮭をとらえて、鼻にフタをして海に放すと、この鮭はその川に戻ってこれなかったのに対し、何もしないで放流した鮭は、再びその川に帰ってきたそうです。また、眼に覆いをかけて放しても川に戻ってくるので、鮭が生まれた川を確かめるには視覚よりも嗅覚が重要のようです。嗅覚を刺激するのは、それぞれの川に特有な化学物質とおもわれますがどんな成分をかぎ分けているのかというと、残念ながら今だに謎のままです。

この「母川回帰性」を利用して、鮭の人工孵化が世界中で行われるようになりました。日本には宝暦・明和年間(1751~1772)から既に、川にのぼって来た鮭を保護し、天然繁殖させる「種川制度」というものがあったそうです。鮭の人工孵化・放流は明治頃から盛んに行われるようになってきました。一時期は水質汚染などのために鮭の遡上数が激減した時期もありましたが、水質が改善されるにつれ年々数を増すようになってきています。

雄と雌の見分け方

白鮭の場合、雄雌の特徴は頭に出ます。
体に比べて頭が大きく直線的なのが雄、頭が比較的小さくて丸みを帯びているのが雌です。
また、背ビレと尾ビレの中間の脂ビレが大きいのが雄、小さいのが雌です。
尾ビレは、雄がV字型なのに対し、雌のはゆるくカーブを描きます。

鮭の日

十一月十一日は「鮭の日」ってご存知でしたか?漢字の「鮭」の字のつくりの部分から、新潟県村上市がPRのために制定したそうです。ちょうど秋鮭の最盛期にあたるので、毎年、魚市場や魚連などでPRのイベントが行われます。