蓮根 – れんこん – lotus root

れんこんの特徴

れんこんは、多年生の水生植物である蓮(はす)の地下茎の肥大した部分を主に食用とします。呼び方もれんこん(蓮の根ということから)、蓮と両方の呼び方をするようです。実や若葉も食用とします。

れんこんを食用としているのは日本、中国など少数の国々だけです。日本では穴があいているので「見通しがきく」というところから、縁起物として、おせち料理に欠かせない野菜のひとつです。

れんこんの栽培は、蓮田といって、水田、というか泥沼のようなところで作られます。葉は水面に出て、夏に白や薄紅色の大きな花を咲かせます。冬に栽培沼の泥の中から、太った地下茎を掘り出して収穫します。

れんこんの旬

旬は晩秋から冬です。7月の下旬ごろから早掘りのれんこんが、新れんこんとして出回り、翌年5月までに順次出回りますが、11~3月がピークとなります。

夏に晴天が多く気温が高かった年ほど豊作になります。

れんこんの種類

明治以降に導入された中国種と日本にもとからあった在来種とに大別されます。

中国種は、明治時代初期に中国から導入されたもので、地下茎が浅く、ふっくらとしています。掘り出しやすく、病気にも強いので、現在は主流となっています。在来種より粘り気が少なく、シャキシャキとした歯ざわりがあり、肉厚なのが特徴です。

在来種はスラリと細長く、茶色がかった肌色をしています。地下茎が深く、収穫量が少なくて、現在は一部の地域でしか栽培されていません。中国種より粘り気が強く、切り口から糸をひくのが特徴です。

また、梅雨すぎから出回る早掘りのものは「新ばす」と呼ばれ、細く色白で、柔らかく歯ざわりも良いので珍重されます。

品種

備中(びっちゅう)

中国種。根茎の形が整った長楕円形で粉質です。主産地は岡山県で、西日本中心に栽培されます。半促成種です。

支那(しな)

中国種。灰白色で根茎が太く、節の間が長めの大型種です。晩生種で西南日本で多く栽培され、保存もきくので長期間出回ります。

天王(てんのう)

在来種。外皮が白く、身は粘りがあって風味がある促成種です。関東地方で多く栽培されます。

上総(かずさ)

在来種。身が白くて粘質の中生種です。

れんこんの加工品

からし蓮根

熊本名物で、ゆでた蓮根の穴にからしみそを詰め、空豆粉入りの衣をつけて揚げたものです。細川家三代藩主綱利の時代に作られ始めたそうです。蓮根のかりっとした歯ざわりや、からしとみその調和が舌に楽しい一品です。

蓮の実

蓮の熟した実をよくゆでて乾燥させたもので、お菓子の材料や炊きこみご飯に入れて使います。滋養強壮食や漢方薬、薬膳料理にも用いられます。

れんこんの選び方

形がふっくらとして丸く肉厚のもの、節と節の間が長く太くてまっすぐなもの、外皮が淡黄色か淡褐色で傷がなくつやがあるもの、を選びます。

切り口は、白くて、穴が小さいものを選びます。穴の周囲に薄青いアクが出ていないものがよいでしょう。

色が白すぎるものは漂白されている可能性があります。

穴の内側が黒っぽいものは、古いので避けましょう。

穴に泥が入っているものは、調理の際、洗い流すのに手間取ります。

れんこんの調理法

れんこんの皮は縦の繊維に沿ってむくとむきやすくなります。

灰汁(あく)が強く、でんぷん質なのでに調理の際は気をつけます。

和食では、ちらしずしの具、煮物、きんぴら、からし蓮根、酢ばす、天ぷら、はさみ揚げなど

洋食では、ピクルスにしたり、バターソテーなど

中華では、炒め物、煮物、スープ、漬物など

灰汁(あく)抜き

灰汁が強い野菜で、切り口は空気に触れるとすぐに黒ずみますので、皮をむいたらすぐに水に漬けます。酸味がじゃまにならない料理の時は、切ったそばから酢水にさらすと、より白く仕上がります。つける時間は、5~15分が目安です。

ゆでるときのコツ

ゆでる時は、お湯に酢を数滴加えると白くきれいにゆで上がります。
ゆですぎるとでんぷんが糊化して芋のような粉っぽい味になりますので、シャキッとした歯ざわりを楽しみたければ、加熱は控えめにしてください。炒めるときも同様です。

炒めるときは一番最後に

れんこんは穴が空いていて火が通りやすいので、炒め物や煮物にする場合は、他の材料を調味料で味付けしたあと、最後にれんこんを加えて、すばやく仕上げます。

鉄製のお鍋はさけて

鉄製の鍋は厳禁です。酸化して黒くなってしまうので、鉄製のお鍋をさけてください。

れんこんの保存法

切ったものは、切り口を空気にふれないようラップフィルムでぴっちり包み、ポリ袋に入れて野菜室に保存してください。

上下に節のついたものは、切ったものより、かなり長持ちします。節がついたまま湿らせた新聞紙で包んでからポリ袋に入れて冷暗所で保存します。

皮をむいたれんこんは、れんこん全体が水に浸かるように密閉容器で保存しておけば変色しませんが、れんこんのビタミンCが水に溶け出てしまいますので、翌日には食べきってしまいましょう。

れんこんの栄養・効能

れんこんの主成分は糖質で、でんぷんやムチン質という粘り気の成分が特有の歯ざわりを持たせています。

ビタミンCが豊富で、みかんの1.5倍、大根の3.7倍に相当する量が含まれています。ビタミンCは熱に弱いのですが、れんこんはでんぷん質が多いために、加熱しても相当量のビタミンCが残ります。また野菜としては珍しくビタミンB12が豊富で、貧血を予防し、肝臓の働きを助けます。

ミネラルではカリウムや亜鉛、銅、鉄を多く含みます。

ペクチンなどの食物繊維も多く、便秘解消や高血圧予防などの効果があります。

中国では茎の部分だけでなく、葉や実や花弁などハスのすべてを薬用に用いています。

風邪の予防や美肌に

れんこんのビタミンCは、100gで1日に必要なビタミンをまかなえます。ビタミンCは疲労回復に効果があり、細胞どうしをつなげるコラーゲンを生成して、血管や粘膜を丈夫にし、肌にはりを与えたり、ウィルスの核酸を破壊して風邪をひきにくくする作用があります。

また、最近では、発がん物質を抑制する効果があることもわかっています。

タバコやお酒を飲みすぎた後は、ビタミンCが必要なので、れんこんを食べるとよいでしょう。

貧血予防に

れんこんに含まれるビタミンB12は貧血を予防します。またビタミンCや鉄も同じ効果があります。漢方には「古血を散らし、病後の渇きを止め、産後のうっ血を治す」とあります。

便秘解消、動脈硬化、高血圧に

不溶性の食物繊維が多く、腸の働きを活発にして便秘を解消し、大腸がんを予防します。また、コレステロールを下げて血圧を正常にし、動脈硬化や高血圧にも効果があります。

胃もたれ、胸焼け、滋養強壮に

れんこんを切ったときに糸を引くのはムチン質が含まれるためです。ムチンはオクラやさといも、納豆などに含まれる成分ですが、胃壁を保護し、たんぱく質の分解に作用するので、過飲過食時の胃腸の負担を軽くします。その他滋養強壮にも効果があります。

また蓮の実は、「蓮肉(れんにく)」「蓮子(れんし)」と呼ばれ、強壮剤として用いられます。肝臓、腎臓、心臓に良いそうです。

消炎・止血効果

れんこんの切り口が黒くなるのはタンニンのためですが、このタンニンの収斂(しゅうれん)作用は、疲れた胃腸に良いとされ、胃・十二指腸潰瘍の下血や喀血に効果があります。

れんこんの民間療法

鼻つまりに

れんこんのおろし汁をガーゼや綿に湿らせて鼻孔につめます。これを左右交互に繰り返して行なうと鼻が通るようになります。特に節の部分が効果的です。

鼻血予防に

鼻血が出やすい人は、れんこんのしぼり汁を毎日盃一杯飲むと効き目があるそうです。

むくみに

漢方ではれんこんの節に利尿作用があるとされ、干して保存しておいたものを煎じると、むくみの解消に役立つとされています。

咳止め、二日酔いに

新鮮なれんこんの、特に節の部分をすりおろしてしぼった汁を飲むと、たんを切り、咳止めや二日酔いに効果があるとされています。皮むかずにおろす方が、薬果があるそうです。

風邪に

れんこんのしぼり汁に大根のおろし汁を同量合わせて、熱湯で薄めて飲みます。

止血効果>

節の部分を火であぶって炭状にし、1日15gほど飲むと良いそうです。また、葉の部分を煎じて飲むのも同様の効果があるそうです。

扁桃炎、口内炎に

葉を煎じてうがいをすると良いそうです。

れんこんの歴史・由来

ハスの原産地には諸説あり、中国などのアジア熱帯原産地説、エジプト原産地説などがあります。食用としての原産はインドと言われています。世界の熱帯、温帯に広く自生しています。

日本でも2千年前の蓮の実(大賀はす)が掘り出されるなど、花はすの歴史は古いです。食用としては鎌倉時代に中国から伝わり、全国各地に栽培がひろまりました。日本ではれんこんの穴から「先が見通せる」ということで、縁起の良い食べ物とされてきました。おせち料理には欠かせない食材です。

ハスは食用としてだけでなく、宗教などにも深く関わってきた植物です。インドでは紀元前3千年もの古い時代から、多産や生命力を創り出す象徴とされてきました。

仏教では、釈迦(しゃか)の誕生を告げて蓮の花が開いたとされ、蓮台(れんだい)という仏教の台座はハスの花のことです。中国や日本でも仏教でいう極楽浄土とは蓮池のこととされていたので、寺院では境内に競って蓮池を作ったそうです。泥水の中から清らかな花を咲かせるはすは、清純を表すシンボルといえます。日本では特に花托(かたく)がハチの巣に似ていることから、「はちす」と呼ばれていました。「古事記」にも「波知須」の記載があります。

れんこんの豆知識

縁起がいいとされるわけ

れんこんに穴があいてところから「先が見通せる」として、日本ではお節料理やお祝い事などの慶事に欠かせない食べ物となっています。
また、古代インドでは、神がハスから誕生したという神話があり、聖なる花、吉祥の象徴とされ、種が多いので、多産、生命、神秘のシンボルにもなっています。

れんこんの穴

どのレンコンにも必ずあるのが穴。穴の数を数えてみると、例外はあるものの、太いのも細いのも、真中に1個、周りに9個か10個あいています。この穴は空気を送るための通気孔の役割を果たしています。レンコンを水槽の中につけ、その穴に空気を吹き込んでみると、いくつもレンコンがつながった先の遠くの切れ目から、ぷくぷくと泡が出てきます。レンコンの穴は地中から葉までずっとつながっており、地上の葉から地中の各所へ空気を供給する通り道の役割を果たしているのです。そのため、れんこんの節やはすの茎にもすべて穴があいているのです。

城の堀に蓮

日本各地の城のお堀には、よく蓮が植えられています。これは非常食の目的であったと言われています。

れんこんの収穫

れんこんは、泥の中を泳ぐようにして掘り出されます。しかもその時期は10~12月の寒い時期ということで、非常な重労働なのです。皆さん、冬のれんこんは、心して食べてくださいね。