玉蜀黍 – とうもろこし – maize,corn

とうもろこしの旬

甘みが強く味がよいのは夏場で、6~9月が旬です。

春先にはハウスものが、真冬でも沖縄や小笠原ショ糖、台湾産のものが少量出まわるなど、周年出荷されています。冷凍品や真空パックされたものは年間出回ります。

主産地は北海道で、8~9月に各地へ大量に空輸されます。

とうもろこしの種類

大分類

とうもろこしの種類は多いのですが、世界的に多く栽培されている種類に、馬歯種のデントコーン、硬粒種のフリントコーン、爆粒種のポップコーン、甘味種のスイートコーンがあります。

その他、栽培は少ないのですが、子実全体が軟質デンプンで出来ている軟粒種のソフトコーン、加熱すると強い粘りが出る糯(もち)種のワキシーコーン、一粒一粒が穎(えい:皮のこと)に包まれたポッドコーンなどがあります。

馬歯種(デントコーン)

種実が比較的やわらかく、成熟すると粒頂がへこんで馬の歯のような形になることから馬歯種といいます。世界で最も栽培量の多いとうもろこしです。大型で収量が多いのが特徴です。デンプン(コーンスターチ)の原料になるほか、油、牛馬の飼料や工業原料などに使用されます。

硬粒種(フリントコーン)

日本で古くから栽培されていた粒が固い種類です。乾燥させた後、引き割ったり粉末に加工したりして食用や飼料などに利用されます。「甲州」が代表品種です。低温に強いという特徴があり、高冷地に栽培されます。

爆裂種(ポップコーン) 別名:ハゼキビ

スナック菓子として人気のポップコーンはこの種の子実が爆裂してはぜかえったものです。粒全体が硬いデンプンで包まれ、内部のわずかな軟質部に水分を含みます。そのため加熱すると水分の急激な膨張によって子実がはじけるのです。子実は小さく、尖っているものや丸いものなど形状はさまざまで、色も白、黄、赤褐色など多様です。

甘味種(スイートコーン)

日本で現在栽培されているものはほとんどがこの種です。他の種が成熟したものを乾燥させたりして食べる「穀物」であるのに対し、未熟なものを野菜としてゆでたり焼いたりして食べるのがこの種の特徴です。種実が成熟しても胚乳の炭水化物がでんぷんにならず、糖分の形で残っているので甘いのです。日本での栽培は、北海道開拓の折にアメリカから導入されたのがきっかけでした。

最初はゴールデンが一般的でしたが、糖分の多いスーパースイート種のハニーバンタムが登場し、その後さらに甘いバイカラー種が開発されました。、現在の主流となっているのはこのバイカラー種で、ピーターコーンの名称で売られることが多いようです。また最近では、昔のゴールデンコーンの人気も復活しています。

ハニーバンダム

1965年頃に登場し、1970年代には爆発的な人気を得ました。甘みが強く長持ちし、スープや煮込み料理のほかコロッケなどにも利用されるなど、広く用いられています。

シルバーコーン

ハニーバンダムの白粒種で、乳白色の小さい粒が美しい種類です。粒皮はやわらかく甘みも強くておいしいので、サラダなどにむいています。

バイカラーコーン 別名:ピーターコーン

黄色と白色の粒が3対1の割合で混じる一代雑種です。甘みが大変強く、皮がやわらかくて歯にはさまらないので人気があります。現在日本では主流になっています。

ベビーコーン 別名:ヤングコーン

スイートコーンをごく若いうちに収穫したもので、やわらかくてまるごと食べることができます。水煮の瓶詰めもあり、炒めものなどにも手軽に使えるために人気があります。主に中国料理で使われ、ピクルス、サラダ、スープ、煮物、鍋物などの材料となります。

オーナメンタルコーン

原産地のアメリカ大陸には各種の彩り豊かなコーンがあり、スナック菓子のほか、リースやドライフラワーに利用されます。赤や紫や黄、それらの濃淡の粒が混ざりあったものなど多種多彩です。

とうもろこしの加工品

一般的な加工品

缶詰や冷凍品、瓶詰めなどがあります。缶詰にも粒状のホールタイプやクリームタイプがあります。

完熟した種子は、粉にしてパンやつぶして焼いてコーンフレークなどが作られます。このほかでん粉を分離したコーンスターチ、種子の胚からはコーン油やマーガリン、石鹸、グリセリンなど、茎や葉は家畜の飼料に、と余すところなく利用されます。

コーン油

とうもろこしの胚乳を搾って採った食用油です。ビタミンEの含有量が高く、生活習慣病の予防などに効果があります。酸化しにくく日保ちがいいので、揚げ物や炒め物、ドレッシングなどに最適で、健康面からも人気です。

コーングリッツ

とうもろこしの胚乳をひき割りにしたものです。製菓やスナック菓子、ビールの原料となります。

コーンフラワー

コーングリッツをさらに細かく砕いた粉です。製菓や練り物のつなぎに使われます。

コーンミール

とうもろこしのあらびき粉です。小麦粉と混ぜてコーンブレッドを焼いたり、お菓子を作ったりします。

バーボンウイスキー

アメリカンウイスキーの代表で、とうもろこしを51%以上用いて蒸留させたものです。ケンタッキー州バーボンが発祥の地なのでこの名があります。

トルティーヤ

とうもろこしの粉を薄くのばし酵母を入れずに焼いたもので、メキシコでは主食となっています。これにタマネギ、トマト、肉、チーズなどを詰めて焼いたものがタコスです。

とうもろこしの選び方

鮮度が大事

とうもろこしは鮮度の低下が激しい作物です。鮮度が落ちると当分や水分が減少し、でん粉量が多くなって食味が悪くなります。できるだけ新しいものを選ぶようにしましょう。

ひげは

茶褐色で光沢があるものが完熟しているしるしです。緑色だったら未熟、干からびていたら熟しすぎている可能性があります。

1本1本が粒のひとつひとつにつながっているので、ひげの多いものは実もその数だけ詰まっているということです。できるだけひげの豊かなものを選びましょう。

外皮は

みずみずしい緑色のものが新鮮です。鮮度が落ちるとと白く変色します。

粒は

びっしりと詰まっていて、押すとへこむぐらいの弾力があるものが新鮮です。固すぎるものは育ちすぎているので避けましょう。

とうもろこしの調理法

できるだけ早く食べる

生のスイートコーンは鮮度が生命なので、買ってきたらすぐに食べるようにしましょう。特に高温に弱く、24時間で栄養素が半減し、味もどんどん落ちていきます。

実は手でむしる

実を取り出す場合には、胚芽の部分に栄養があるので、包丁で切り落とすのではなく手でむしり取るようにします。

ゆでたとうもろこしの実をきれいにむしるには、5cmぐらいの適当な長さに切って、先に指で縦に一列だけ取りのぞき、その後は親指の腹でほぐすようにはずしていくとうまくいきます。

いろいろな食べ方

軸のついた生のものは、ゆでたり、塩蒸ししたり、焼いたりします。塩やバターやしょう油などとよく合い、独特の風味をだします。また下ゆでして実だけはずしてサラダやスープ、炒めものなどにもおいしいです。

缶詰や冷凍のものは、かき揚げやスープ、バターソテー、サラダ、コロッケなどに。冷凍ものは半解凍してから調理してください。

クリームスタイルはすり流し汁やスープ、煮込み、揚げ物の衣などに。

ヤングコーンは、スープやあんかけ風煮もの、炒めものなどのほかに、ゆでてサラダにもします。

とうもろこしをゆでる

とうもろこしが完全に浸るぐらい大きななべに水をたっぷり張り、塩を加えて沸騰させます。煮立つと中火にして、ひげと外皮を2~3枚残したまま、20~30分ほど加熱します。時間はとうもろこしの固さで加減してください。

ゆで上がったら約10分ほどそのままゆで汁に浸しておきます。こうすると甘みが出てやわらかくなります。

ひげには色素が含まれるので鮮やかでおいしそうな色にゆで上げる効果があります。

焼きとうもろこし

生のスイートコーンを7~10分ほど下ゆでするか電子レンジで5分ほど加熱し、焼き網で軽くこげ目がつくように焼きます。

しょう油やバターを数回ぬっては焼きを繰り返すことで食欲を刺激する香りと風味が味わえます。

電子レンジで蒸す

両端を包丁で切り落とし、皮をむかずに電子レンジで一本につき5分ほど加熱します。加熱中は上下を一回返すのがポイントです。

加熱後、そのまま数分間蒸らすと皮がラップ代わりになり、栄養素もほとんど失われません。

外皮の無い場合は、少量の塩でもんだ後ラップで代用しても良いでしょう。

とうもろこしの保存

買ってきてすぐに食べるのが正解

何度も繰り返してお伝えしていますが、とうもろこしは鮮度が損なわれやすい食材なので、できるだけ早く食べましょう。糖分はすぐに呼吸に消費され、でんぷんに変わっていきます。

低温で立てて保存

やむなく生で保存する場合は、皮つきのままかラップで包んで冷蔵庫の野菜室で立てておきます。低温にすることで、呼吸をある程度押さえることができます。

なぜ立てておく?

立てて保存することの意味ですが、とうもろこしの持つ「走光性」がその理由です。とうもろこしは茎の一部ですが、倒れても自力で立ちあがろうとする性質(走光性)があり、そのためのエネルギーに自分の糖分を消費するのです。一晩、横に寝かしておくか立てておくかで、糖分に30%以上も差がつくと言います。

すぐに食べきれないときは冷凍保存

次の何れかの方法で冷凍保存できます。何れの方法も3ヶ月ぐらいもちます。粒保存かクリーム保存の場合は、凍ったままでも料理に使用できるので便利です。

・ゆでるか塩蒸ししてから、ラップをして丸ごと冷凍庫で保存します。

・固ゆでしたあと冷まして粒をほぐし、小分けしてパックで冷凍します。

・ゆでたあとミキサーにかけてクリーム状にし、パックで冷凍します。

とうもろこしの栄養・効能

とうもろこしの栄養成分

主成分はでんぷんですが、糖質が多く、ビタミンB1、B2、E、ナイアシンなどのビタミン類のほか、リンや鉄、カリウムなどのミネラル成分、セルロースなどの食物繊維をバランスよく含む高エネルギー食品です。

胚芽には良質の植物性脂肪であるリノール酸がたっぷり含まれています。

たんぱく質も含まれますが、リジンやトリプトフアンといった必須アミノ酸がほとんどないのでたんぱく質の供給源にはなりません。

疲労回復に

とうもろこしの甘みのもとはショ糖によるもので、消化吸収が早いので疲れたときに食べると短時間で元気が回復します。

利尿効果

とうもろこしのひげの部分を集めて乾燥させたものを生薬名で「南蛮毛(なんばんげ)」と呼び、利尿、止血、降圧などの薬効があります。煎じて急性腎炎や妊娠時のむくみとりに用いられます。

動脈硬化の予防に

とうもろこしの胚芽部に含まれているリノール酸は、コレステロールを低下させる働きがあり、動脈硬化症の予防に効果があります。常食がむずかしい場合は、コーン油を利用するとよいでしょう。

便秘

食物繊維は非常に多く、100g中2gも含まれていてコレステロールの排出や便秘に大変効果があります。また、肥満防止や高脂血症の予防にも役立ちます。

反面、消化はあまりよくありませんので食べ過ぎにはご注意を。

高血圧予防に

豊富に含まれているカリウムが体内の余分な塩分の排泄にはたらき、高血圧の予防に役立ちます。

滋養・強壮に

種実を乾燥させて粉にしたものは、滋養・強壮剤として用いられます。

老化防止に

豊富に含まれるビタミンEは若返りのビタミンとも呼ばれ、活性酸素の害からからだを守り、動脈硬化や老化防止に効果があります。また毛細血管の血行を促進し、頭痛、しもやけ、冷え性などの症状改善に効果があります。

とうもろこしの歴史

原産地はメキシコか南アメリカで、栽培の歴史はきわめて古く、現在の栽培種のもとは紀元前5000年頃に南米でできたといわれています。

マヤやアステカ、インカなどの文明では、じゃがいもなどの芋類とともに、とうもろこしを中心とした穀類が発展の原動力となりました。

15世紀にコロンブスが新大陸からスペインへ持ち帰ったのをきっかけに急速に世界中に広まりました。

日本へは、1579年(天正7)ポルトガル人によって西瓜(すいか)や南瓜(かぼちゃ)の種子とともに長崎に持ち込まれたとされています。

徐々に四国の山間部や阿蘇、富士の山麓などで栽培されるようになり、江戸時代にオランダ医学が入ってきてからは主に薬用として用いられるようになりました。

食用として本格的な栽培が始まったのは明治に入ってからのことで、栽培しやすく味のよい品種が、北海道の開発の際にアメリカから導入されたことによります。開拓民のなみなみならぬ苦労が今日のとうもろこし栽培のもとを築き、その後全国へ普及しました。

とうもろこしの豆知識

とうもろこし(玉蜀黍)の語源

とうもろこしは漢字で「玉蜀黍」と表記されますが、その語源は「粒が玉の様な蜀黍(もろこしきび)」と言う意味です。

「蜀黍(もろこしきび)」とは、日本古来の黍(きび)に対して、「中国(三国時代の蜀)の黍」を意味し、この「もろこしきび」が後年略されて「もろこし」と呼ばれるようになり、更に日本の黍と区別して唐(中国の意味)のもろこし、唐黍、唐もろこし、などと呼ばれるようになったそうです。

なお、別名では南蛮黍(なんばんきび)、高麗黍(こうらいきび)とも呼ばれていました。

粒の色に見るメンデルの法則

バイカラーコーン(別名:ピーターコーン)と呼ばれる種類は、黄色と白色の粒が3対1の割合で混じり合うのが特徴ですが、これはメンデルの法則が粒の色に象徴的に表れたものです。黄色と白の親を掛け合わせできた粒に孫の色が現れて3対1の割合で黄色と白になります。

世界のとうもろこし事情

中南米では、現在でもとうもろこしの粉で作った生地を薄く伸ばして焼いた「トルティーヤ」と呼ばれるとうもろこしパンが主食とされています。

メキシコでは、おなじみの「タコス」(とうもろこしパンのサンドイッチ)や「チーズ・エンテラス」(とうもろこしパンとチーズ、玉ネギを入れたグラタン)が常食されています。

中国では、水で粉を練り、蒸したものを「ウォトウ」と呼び、よく食べられています。

アメリカやイギリスでは、「コーンフレーク」に牛乳と砂糖をかけたものが一般家庭の朝食になっていますし、アイオワ州あたりのコーンベルト地帯では、「コーンミール」(粗びきした粉のおかゆ)や「コーン・ブレッド」がごく一般的な食物です。また、アメリカ人は「ポップコーン」好きで、どの家庭にも電気ポップコーン器があり、どこへ行くにもポップコーンを離しません。