筍 – たけのこ – bamboo shoot

筍(たけのこ)の特徴

春の味覚を代表する食材です。

成長が早く、10日(旬内)で竹になるといわれるところから「筍」の字があてられました。

独特の旨みがあり、日本料理、中国料理で広く使われています。

筍(たけのこ)の旬

旬は4~5月です。生のたけのこは旬の明確な食材で、特に季節感を大事にする日本料理では春の味覚として喜ばれます。

孟宗竹(もうそうちく)は3月中旬~5月頃まで、淡竹(はちく)がそれに続き、真竹(まだけ)や根曲がり竹(ねまがりだけ)が5~6月頃に出まわります。

旬となる地域は、いわゆる「たけのこ前線」となって、南の地方から北上していきます。

筍(たけのこ)の種類

たけのこの種類は、約70種類程ありますが、一般的な食用のたけのこは、孟宗竹(もうそうちく)の若芽のことをいいます。

孟宗竹(もうそうちく)

皮に茶色のビロードのような毛が生えているのが特徴で、最も味が良く、たけのこの代表格です。九州・四国から東北南部まで採れますが、土地により品質に差が生じ、味の良さで定評があるのは京都産のものです。大型で肉厚、実は白く柔らかで、えぐみも少なく、甘味を含んだ独特のうまみと、歯ごたえがあります。吸い物や和え物、煮物、揚げ物などに利用されます。

淡竹(はちく)

5月頃、九州や関西地方から出回ってきます。耐寒性もあり、北は北海道南部まで栽培されています。原産は中国です。皮の色は赤紫色、茎は淡い緑色で白い粉をふきます。肉質が薄く、味はえぐみが少ない淡白な味です。

真竹(まだけ)

関西、特に京都に多い種です。中国原産とされますが、日本に野生のものが自生していたとも言われています。皮は毛が無く、黒い斑点があり、民芸品や包装用に用いられます。肉質はやや硬めで、あくが強く、苦味もありますが、味は良いです。

根曲がり竹(ねまがりたけ) (別名)五三竹(ごさんちく)、千島笹(ちしまざさ)、篠竹(すすだけ)

日本特産の笹で、東北、北海道などが主な産地です。地方により呼び名がさまざまです。根元で茎が湾曲して立ちあがるために根曲がり竹の名があります。太さは1~2cm、丈は5~15cmぐらいで、山菜として出されることが多いようです。根元はやや固いですが、中身は白くて独特の風味と歯ごたえが味わえます。市場に出回るものはほとんどがハウス栽培で、自生するものは掘り出されてすぐに産地の朝市などに並びます。瓶詰めなどにもされます。

筍(たけのこ)の加工品

メンマ (別名)シナチク

中国南部や台湾で栽培される麻竹(まちく)のたけのこを蒸し、塩漬けにして乳酸発酵させ、天日乾燥したものです。乾物、水煮にしたものや味つけしたものなどが売られています。製品として出まわるものは、台湾や中国からの輸入ものがほとんどです。

水煮

たけのこは時間が立つとアクが強くなりえぐみが増すため、大産地ではほとんどを掘ってすぐに水煮加工します。年中入手でき、調理も楽なので、便利です。

筍(たけのこ)の選び方

たけのこは鮮度が命です。皮につやがあり、うぶ毛のそろった、切り口のみずみずしいものを選びましょう。

大きさの割に軽いものは水分が無くなり、鮮度が落ちています。

穂先が黄色でなく緑色になっているものは、育ちすぎでえぐみが強いので避けましょう。

孟宗竹の場合は、形がずんぐりとした釣鐘型もので、外皮は薄茶色でしっとりとしていて毛ばだち、先端は黄色く、切り口が白くてみずみずしいものがよいでしょう。根元の赤い粒々が小さくて少ないものほどやわらかいです。

筍(たけのこ)の調理法

まず、ゆがきましょう
昔から「たけのこを掘りはじめたら、お湯をわかしておけ」と言われるほど、手早く下ゆですることが大事です。下ゆですることにより、あくが抜けて、新鮮さを保つことができます。たけのこを買ってきたら、すぐに下の手順で下ゆでしてください。

たけのこの下ゆでの手順
  • 皮付きのまま穂先の部分を斜めに切り落とし、さらに切り口から皮の部分を縦半分に1本の切れ目を入れます。
  • たっぷりの水にぬか2カップと赤唐辛子2~3本を入れて強火にかけ、沸とうしたら落としぶたをして、弱火で1時間以上ゆでます。
  • 根元に竹ぐしがすっと通るようになったら火を止め、ゆで汁の中でそのまま冷まします。
  • さめたらよく水洗いし、切り目から皮を開くようにして皮をむきます。
下ゆでの注意点

茹でたあと、すぐ水にあげると、たけのこにひびが入ったり、身が縮んでしまうことがあります。

ゆでるときにぬかを入れるのはなぜ?

たけのこのえぐみの成分は、ぬかに含まれるカルシウムと結合して中和されるからです。カルシウムの多いわかめとの炊き合わせが良いのもこのためです。

たけのこを煮るコツ

たけのこを煮ものにするときのポイントは、一気に味付けしないことです。一気に味付けしてしまうと、煮汁ばかりが甘くて、肝心のたけのこは味気なくなってしまいます。砂糖やみりんなどの甘い調味料は先に加え、しばらく煮こんで甘味が十分しみこんだあとに、しょう油や塩などを加えるようにします。

部分別の使用法

たけのこは部分により硬さが違います。用途による使い分けをおすすめします。

先端のやわらかい部分(姫皮といいます)は酢の物やあえ物に、穂先は椀種や炊き込み御飯などにするとおいしいです。

中央部は、煮物、炒め物、揚げ物に適しています。輪切りにして調理できます。

上部はやわらかく、椀種、サラダ、あえ物、ご飯に使えます。

根元は繊維が多く硬いですが、薄切りやおろして揚げたり炒めたりするとおいしいです。

地面に顔を出さないうちに掘って、なおかつ、掘りたて(掘ってから1時間以内)のものは、さっとゆがくか生のままで薄切りにし、刺身風に食べることができます。かすかな甘味がありおいしいです。一年に一度のぜいたくという人もいるほどです。

筍(たけのこ)の保存法

生のままおいておくと固くなり、えぐみが増します。保存する場合は必ず、下ゆでをしてあく抜きをしてください。

あく抜き後、水に浸して密封容器に入れ、冷蔵庫で保存します。時々水を入れ替えれば、10日ぐらい持ちます。

水煮を買ってきたときは、水を張った容器に移し替えて冷蔵庫で保存します。賞味期限内に食べきってください。

食物繊維が多いので、冷凍保存には向きません。解凍するとベタベタになり、食感も風味もかなり落ちてしまいます。

筍(たけのこ)の栄養・効能

栄養成分は、たんぱく質が豊富で、ビタミンB1、B2、ミネラルを含みます。

食物繊維が豊富なため、便秘や大腸がんなどの予防に効果的だとされています。

うまみ成分はグルタミン酸やチロシン、アスパラギン酸などのアミノ酸によるものです。ゆでたけのこの白い粒々はチロシンで人体に害はありません。

えぐみのもとはホモゲンチジン酸や蓚酸(しゅうさん)で、堀り出してから時間が立つごとに増加します。

たけのこは精が強い食物ですが、食べ過ぎが原因で吹き出ものやアレルギーに似た症状を起こすことがあります。これはコリンやノイリンという物質が原因だそうです。

大腸がんの予防や便秘の改善

豊富な食物繊維は、便秘の予防・改善だけでなく、大腸がんの予防やコレステロールの吸収を抑え、体外に排出してくれるという効果があります。

高血圧予防

わずかながらもカリウムが含まれていますので、体内のナトリウムを排出する効果があります。高血圧の予防になります。

ダイエット食

食物繊維が多く、便秘の予防や解消、コレステロールの排出にも効果があり、しかも低カロリーで、ダイエット食として適しています。

疲労回復

うまみ成分の一つであるアスパラギン酸は、グリーンアスパラガスなどにも含まれる成分で、疲労回復に効果があります。

筍(たけのこ)の民間療法

麻疹(はしか)のときに

昔から、発疹が内攻しておもてに出てこないときに、たけのこの煮汁を飲ませると1~2回で発疹が出て、麻疹(はしか)が治るといわれています。

筍(たけのこ)の歴史・由来

たけのこの記述は「古事記」にも見られ、日本でも古くから食べられていたようです。ただし、現在手に入るたけのこはほとんど中国が原産地で、当時はまだ日本に入ってきておらず、そのころ食用としていたのは、日本に古来から自生する真竹(まだけ)ではなかったかと言われています。

孟宗竹(もうそうちく)は、1736年、薩摩藩主島津吉貴によって琉球経由で入った株が植えられたのが最初で、以後各地に広まりました。

筍(たけのこ)の豆知識

孟宗竹(もうそうちく)という名のいわれ

中国二十四孝の一人である孟宗が、病気の母の欲しがる筍を探して雪の中を歩き回り、とうとう掘り当てて、孟宗の母は元気を取り戻した、という故事に由来します。