太刀魚 – たちうお – Atlantic cutlassfish
太刀魚の特徴
白身でくせのない魚で、特に関西で人気の魚です。
名前通り、刀ようにに平たく長い姿と、鮮やかな銀白色の体色が特徴です。うろこが全く無いため、特に釣り上げたばかりのものはなめらかに光り輝いています。体長は、1.5mにもなります。
口が大きく、下あごが突き出していて鋭い歯を持つ魚です。犬歯の先端は返しの付いた鋭い剃刀状になっています。釣りをする場合も仕掛けの一部はテグス(釣り糸)ではなく、針金を使うほどです。
上あごの中には予備歯があり、歯が欠けてもすぐに、生えかわります。鋭い歯を持つ割にはやわらかいえさを好み、主にイカやタコ、イワシなどを食べます。
後頭部が固く隆起し、尻尾は細くひも状になっています。この形から、欧米では「ヘア・テール(髪の毛のような魚)」とも呼ばれています。
大きなぎょろ目も特徴で、遠い過去に深海で暮らしていた名残りではないかと言われています。
日本では、北海道南部より南に分布し、特に本州中部以南で多く獲れます。世界中の亜熱帯または温帯の海の沖合いに生息します。
回遊性の魚で、南の海で越冬し、春から夏にかけて北上して産卵します。
太刀魚の旬と産地
初夏から秋にかけてが旬で、主な漁場は中国地方や瀬戸内海です。8~10月に最盛期を向かえます。
東シナ海での漁獲高も多く、6月頃が最盛期で長崎や下関に大量に水揚げされます。
冬場に獲れるものも充分に脂がのっているので、ほぼ一年を通して美味しい魚と言ってよいでしょう。
太刀魚の選び方
味は近海物がよいでしょう。外国産の大型のものは切り身で出まわりますが、近海物に比べて大味です。
体長は1m前後、重さは600g程度のものがよいでしょう。小型のものは脂肪が少なく旨味にかけます。
表皮の銀粉のはがれていないものや破れていないものが新鮮です。
太刀魚の調理法
一般的な料理法
肉質が柔らかく身崩れしやすいので煮物や鍋物にはむきません。塩焼き、照り焼き、酒蒸し、ムニエル、唐揚げ、バター焼きなどにします。
塩焼きはしっかりと脂ののった太めのものがおいしいです。銀色の皮ができるだけやぶれないようにします。
バターや油と相性がよく、唐揚げやバター焼きは意外なおいしさでおすすめです。
煮るときは、一度唐揚げにしてから煮るようにすると煮崩れしません。
鮮度の落ちたものは表皮の銀粉が生ぐさいので包丁などでしごきとるとよいでしょう。
新鮮な刺身は大トロの味
鮮度のよい太刀魚が手に入ったら、刺身や天ぷらなどで食べるとよいでしょう。とれたての新鮮なものは、マグロの大トロに似ている味だと評する人もいるぐらいです。
刺身の場合は皮付きのままイカの細作りのようにできる限り細く切り、わさび醤油かポン酢で食べます。
天ぷらは三枚おろしにして揚げるだけですが、とてもふっくらと柔らかくておいしいです。
鮮度がよいときに昆布締めにしてもおいしいです。
おろすときのポイント
太刀魚は骨が固いので、三枚におろすのが普通です。身がやわらかいので骨はしっかり取り除いておきましょう。
(1)おろす前に背びれの両側に包丁を入れ、背びれを包丁でおさえて引き抜きます。
(2)腹骨をすき取るようにして取り除きます。
(3)三枚におろしたら、太刀魚特有の白い筋(神経)を箸などで持ち上げて取り除いておきます。
おろしたあとは軽く塩をふって30分ぐらいおいておくと、水分とともに臭みがぬけて身がひきしまりおいしくなります。
太刀魚の照り焼き
(1)三枚におろして薄塩をして30分ぐらいおいておきます。
(2)水洗いし、水気をよくふきとります。
(3)中火にフライパンをかけ、脂を熱したあと、皮目にしっかり焼き色がつくまで焼きます。
(4)ひっくり返してサッと焼いて取り出します。
(5)フライパンに、酒1/4カップ、みりん1/4カップ、砂糖大さじ1、しょうゆ1/4カップ、ショウガ汁少々を合せて煮詰めます。
(6)(4)の太刀魚を戻して、しっかりたれをからめます。
(7)太刀魚を皿に盛り、残ったたれを再度煮詰めて、上からかけます。
太刀魚の栄養・効能
主成分
脂質はやや高めで、マグネシウムやリンなどのミネラル分を多く含みます。さらに脂溶性ビタミンのレチノールやビタミンD、E、B2、ナイアシンなどのビタミン類を含んでいます。
骨や歯を強くする
特に豊富なリンは、歯や骨を形成する主材料となります。また筋肉、脳、神経、肝臓などの組織にはたらきかけ、細胞の成長と分化、エネルギーの運搬、神経や筋肉の機能をバランスよく保つのに役立ちます。
また、比較的多く含まれるビタミンDは、カルシウムとリンの吸収を助け、血中濃度を一定に保って、骨や歯への沈着を促すはたらきがあります。
神経を安定させる
マグネシウムは体温や血圧の調節役として働き、酵素やホルモンの働きを活発化させて、神経障害や虚血性心疾患を予防します。カルシウムやマグネシウムが不足すると細胞が興奮状態になり、イライラを引き起こします。
動脈硬化の防止
白身の魚のわりに脂肪分が多く、通常時で5.9%、春先には20%にもなりますが、その割にはあっさりした味です。魚にしては珍しくオレイン酸が多量に含まれていて、動脈硬化、心筋梗塞、胃病の予防など、優れた効果があります。
肌あれ予防に
ナイアシンは血行をよくし、神経組織の働きを助けるので、冷え性や頭痛の改善に効果があります。また二日酔いを防ぎ、肌に張りと艶を与えます。
太刀魚の豆知識
名前の由来
「太刀魚」という漢字名が示す通り、体が扁平で刀に似ていることから名付けられました。獲れたての新鮮なものは銀色に光輝いており、形ばかりか色までも刀そのものです。
立ち魚?
「たちうお」という呼び名は、もうひとつ、「立ち魚」からきたという説があります。この魚は、急いで移動する必要のない時や頭上のエサを待ち伏せするときに、頭を上にして背びれを細かく波打たせながら「立ち泳ぎ」をするのです。ちなみに、孵化したばかりの稚魚は逆立ち泳ぎをするそうです。
真珠の輝き
たちうおを「太刀魚」に見せているのは「太刀箔(たちはく)」と呼ばれる銀色の表皮です。これはグアニンという高分子化合物の結晶成分で、セルロイドと練り合わせて人工真珠を製造したり、銀箔紙やアイシャドー、マニキュアなどの化粧品の原料として利用されています。
太刀魚は鱗の代わりにこのグアニンが体を保護しているため、全て剥離してしまうと死んでしまいます。このため水族館では飼育が非常に難しいそうです。
太刀魚の地方名
★東京(たちのうお)
★和歌山、高知、明石、徳島(たちお、たちいお)
★福島県小名浜(たちのよ)
★仙台(はくうお、はくなぎ)