蟹 – かに – crab
蟹(かに)の特徴
日本近海で取れるかには約1000種類も確認されていますが、商業捕獲されているものは数10種類です。その中で横綱格として良く知られているのは、北陸のずわいがにと北海道の毛がにです。
かにはおいしいだけではなく、高タンパクで低カロリーなので、ダイエット食として最適な上に、タウリンなどの、からだ全体の機能を高める有効成分が多量に含まれている優れた食材です。
非常に傷みやすい食材なので、調理や保存法はしっかり頭に入れておきましょう。
蟹(かに)の旬
種類によって旬が異なります。日本での漁獲高の減少や規制のために、輸入ものの最盛期を旬ととらえられているものもあります。
ここでは日本産の旬をあげておきましょう。
「ずわいがに」 冬11月~1月頃
「毛がに」 冬12月~3月頃
「がざみ」 冬から春1月~4月頃、夏6~9月頃
「たらばがに」 冬11月~3月頃
「花咲がに」 秋9月~11月頃
蟹(かに)の種類
かにの仲間は世界中で6000種あまりが知られており、日本近海だけでも、1000種に及びます。このうち、水産価値のある種類は少ないですが、地元で食べられているというものは結構あります。
タラバガニ類は、分類学的にみるとカニ類ではなく、やどかりに近い種類です。かたちがかにに似ているので、一般的にかにとして扱われます。
目 | 科 | 種類 |
短尾亜目 カニ類)> |
クモガニ科 | ずわいがに、紅ずわいがに、たかあしがに等 |
クリガニ科 | 毛がに、栗がに等 | |
ワタリガニ科 | がざみ、ブルークラブ等 | |
アサヒガニ科 | あさひがに等 | |
サワガニ科 | 沢がに等 | |
イワガニ科 | もくずがに、上海がに等 | |
その他 | ストーンクラブ等 | |
異尾亜目 ヤドカリ類) |
タラバガニ科 | たらばがに、花咲がに、いばらがに、いばらがにもどき等 |
楚蟹(ずわいがに)
(別名)越前がに、松葉がに
丸みを帯びた三角形の甲らにこぶ状の突起があることと、長い足が特徴です。
日本海全域で漁獲されます。中でも石川、福井、兵庫、鳥取の沖合いが主産地で、本場ものとされて高値で出まわります。
旬は冬で、11月~1月頃です。
呼び名が地域によって変わります。北海道・東北地方では「ずわいがに」、関東、北陸、一部の山陰では「越前がに」、関西、一部の山陰では「松葉がに」と呼ばれています。
体が大きく身入りが多いのが特徴で、全国的に人気があります。甘みの強い身は火に通しても身縮みせずやわらかくいただけます。また、その甲らには、かに味噌がたっぷりと詰まっています。
残念なことに国産品は極端に数が少なく、輸入ものの「おおずわいがに」や代用の「べにずわいがに」が「ずわいがに」として出回っているのが現状です。
雌は、ずわいがにとは呼ばずに、せいこ、せこ、こうばくなどと呼ばれて区別されます。6~7年で生殖可能になりますが、1年間卵を抱いたあと、脱皮をせずにすぐ次の産卵をするため、雄の半分ぐらいの大きさしかありません。雄に比べると身入りは少ないのですが、内子(甲らの中に入っている未受精の赤い卵)と外子(腹に抱いている受精した卵)が絶品です。「香箱かに」という呼び名は、珍味の宝庫であるこの甲らを香りの箱に見立てたものです。価格は雄に比べると5分の1から10分の1と非常に手頃です。
紅楚蟹(べにずわいがに)
形はずわいがにに似ていますが、生きているときから鮮やかな赤褐色をしていて、甲らが高く盛り上がっています。
ずわいがによりは肉質が劣り、すぐに黒くなるので水産価値は低いのですが、近年のずわいがにの減少とともに漁獲量は増えています。
高脚蟹(たかあしがに)
甲らは縦長で幅は30~40cm、脚は長く、特に充分に成長した雄のはさみ脚は歩脚よりも長くなり、左右に広げると3~4mにもなります。世界最大のかにです。
岩手県から台湾まで分布しますが、駿河湾、相模湾、熊野灘、土佐湾などが主産地で、地元の名物として販売されています。
水深200~400mの海底に棲みますが、早春には20mほどの浅海にも移動します。
肉は柔らかいのですが、やや大味で苦みがあります。
ゆでて二杯酢で食べるほか、鍋物、蒸しものなどにします。
毛蟹(けがに) 別名:大栗蟹(おおくりがに)
甲らはやや縦長の四角形で、全身が短く固い毛におおわれています。
北海道が主産地で、日本海側では能登半島付近、太平洋側では宮城県まで、北はベーリング海からアラスカ沿岸まで広く分布します。
旬は冬で、12月から3月頃です。産卵期は4~5月頃で、これ以前の、卵を抱いた雌が好まれるようです。5~7月を旬とする人もいますが、これはオホーツクで獲れる季節を指したもので、あながち間違いとはいえないでしょう。
甲らが薄くてあまりかたくなく、食べやすいかにです。ゆでるとやわらかく、甘みが強くておいしいです。みそも美味で人気があります。
熱燗にしたお酒を甲らに注いだ「甲ら酒」も美味です。
丸ごとゆでて二杯酢で食べることが多いようです。
漁獲量は多く、活けものも冷凍ものも広く出まわります。日本産だけではなく、輸入ものも多いです。
栗蟹(くりがに)
毛の生えぐあいなどが、毛がににそっくりで、市場では毛がにの名前で売られていることもあります。
肉量が少なく、商品価値は低くて、毛がにの代用品として扱われます。
甲らのぎざぎざが大きく、特に4番目のぎざぎざが大きく左右に張り出しているため、甲ら全体としては5角形に近いので、毛がにとは区別できます。
がざみ 別名:わたりがに、ひしがに
泳ぎが巧みで、一般にわたりがにと呼ばれます。また、甲らが菱形なので、ひしがにと呼ばれることもあります。
甲長は7cm、甲幅は20cmほどで、色は暗緑色または黄褐色、最後の脚が平べったいのが特徴です。
津軽海峡から九州、韓国、中国の内海に棲みます。特に東京湾、伊勢湾、瀬戸内、有明海で多くとれます。
旬は1~4月ですが、卵をもつ6~9月もおいしくなります。
春や夏は肉の多い雄を、冬場はみそも卵もたっぷりつまった雌を求めるのがよいでしょう。卵を抱いている雌は高価です。雄はぶつ切りにして、切りがにとして売られます。
脚には少ししか身がないのですが、脚のつけねには身が多く、みそや卵巣も美味です。
活きのいいものは、塩ゆでして二杯酢やしょうが酢醤油などで食べます。味噌汁や鍋に入れるとだしがでておいしいです。ぶつ切りで炒め物などにして食べるほか、蒸しものにも向きます。
中国料理では、青蟹(チンシェ)と呼ばれ、よく使用されます。
ブルークラブ 別名:青がに、ソフトシェルクラブ
アメリカで重視されているかにで、がざみに似ています。
特に日本へは、脱皮直後の冷凍品が、ソフトシェルクラブと呼ばれて輸入されています。
主にから揚げにしたり、バターでカリッと焼いたりして食べます。
朝日蟹、旭蟹(あさひがに)
濃い橙色をしていて、甲らは縦長で25cmにも達します。はさみは大きく、スパナのような形をしています。脚は全て平たく、短くて、砂にもぐるために使われます。
相模湾より南、インド洋西部まで、広く分布します。
旬は夏です。
肉量は多く、白身で淡白な味で、各国で食用とされており、日本でも養殖の研究が盛んです。近い将来、安価な養殖ものが食卓に並ぶようになるかも。
既にレストランなどでは、食材として積極的に取り入れられており、グラタンやフライ、サラダなどに使われています。
沢蟹(さわがに) 別名:川がに
本州、四国、九州に広く分布する、淡水性のかにです。
清流に棲むため、川がにとも呼ばれます。
甲らの幅は2.5cmくらいで、丸みのある四角形をしています。
色は紫や茶色がかったもの、淡い青色のものなど、棲む場所により異なりますが、市場には、赤褐色のものが多く出まわります。
一年中出まわりますが、産卵期の夏は味が落ちます。
姿のままから揚げにしたり、甘辛く煮て艶煮(つやに)にしたりします。
調理には生きたものを用いますが、ウェステルマン肺吸虫という寄生虫の中間宿主になるので、よく加熱することが必要です。
藻屑蟹(もくずがに) 別名:川がに、毛がに、ずがに、もくた、さくらがに
日本全国の河川に棲む、淡水性のかにです。秋には川を下り、産卵します。
甲らの幅は8cmほどで、暗い緑色をしています。
はさみに軟らかい毛がびっしりと生え、脚にも長い毛が生えています。このはさみの毛が藻屑(もくず)のように見えることから、この名があります。
産卵期の9~10月が旬です。
かに汁、塩ゆでなどにします。
肺吸虫(肺臓ジストマ)の中間宿主になるので、調理の際には必ず火に通すことが必要です。
上海蟹(シャンハイがに) 別名:中国藻屑(ちゅうごくもくず)がに
日本の藻屑(もくず)がにに近い種です。
中国南部の沿岸部の河川や湖沼に棲み、秋には産卵のために海に下りてきます。また、ヨーロッパの河口にも広く分布しています。20世紀初めに、貨物船によって偶然運ばれたものが繁殖したものと見られています。
10月には雌、11月には雄がおいしいとされています。
身は少ないですが、美味で、蒸して食べるほか、各種の料理に使われます。
上海がにの蒸しものは、上海の名物料理になっています。また、老酒漬けの酔蟹(ツェイシェ)もよく知られています。
ストーンクラブ 別名:メニッペ
カリブ海沿岸で多く漁獲されます。船上ではさみ脚だけをもぎとり、かには海にもどします。数ヶ月後には、はさみ脚は再生するので、再び利用することができます。
日本には、ゆでて冷凍したはさみ脚が大量に輸入され、各地のレストランで食べることができます。つめの先が黒いのが特徴です。
殻が大変固いので、割れ目を入れて皿に盛られます。主に、蒸した後、バターとレモンを添えて食べます。
鱈場蟹(たらばがに)
かにの仲間のような名前ですが、実はやどかりの仲間です。やどかりがそうであるように、たらばがにには、はさみを含めて、脚が8本しかありません。また、はさみ脚は右側の方が大きくなります。
甲らは丸みのある四角形で、多数の小突起でおおわれています。
北海道沿岸からオホーツク海、アラスカが主産地で、鱈(たら)と漁場が重なるために、この名前がついています。近年、資源減少して、禁猟区や禁猟期間が増えて、カナダやアラスカからの輸入に依存しているのが現状です。
10年で生殖ができるようになり、30~35年ぐらいまで生きます。
旬は冬で11~3月頃です。
缶詰としては最高級品ですが、繊維が太く、上品で淡白な味が人気で、冷凍もの、最近では、活けものも多く出まわるようになりました。足だけで販売されることが多いようです。刺身や焼きがに、かにちりなどにします。
近縁の「いばらがに」や「いばらがにもどき」、「きたいばらがに」などが、たらばがにの代用として販売されていることがあります。
花咲蟹(はなさきがに)
たらばがにと同じように、やどかりの仲間です。
甲らは15cmほどで、表面に固い突起が複数あるのが特徴です。
体は紫がかった鉄さび色で、ゆでると鮮やかな赤色になります。
以前は花咲半島と呼ばれていた、北海道の根室半島近海で多く採れることから、この名があります。
根室、釧路、千島列島、カムチャツカ半島沿岸に分布します。
旬は秋で、9~11月ごろです。ロシアからの輸入ものが夏頃、冷凍ものが通年出まわります。
ゆでて鮮やかな赤色になったものが売られていて、味は濃厚で、甘みがあり、身の量も多いのですが、殻が固いので少し食べるのに苦労します。二杯酢で食べることが多いようです。
蟹(かに)の加工品
かに缶詰
かにの種類や肉質の差などで、高価なものから手ごろな価格のものまでありますが、料理の飾りに使う時は高価な高級品、混ぜて使う場合は安いものといったように、用途によって使い分けすると、よいでしょう。たらばがにのものが最高級品、そのほか、ずわいがにやおおえんこうがにのものなどがあります。おおえんこうがにのものは全てが輸入もので、缶詰には、丸ずわいがにの名で表示されます。
蟹子(かにこ)
かにの卵を塩漬けにしたものです。受精前の甲らの内側にへばりついているものを内子(うちこ)、腹に抱いているものを外子(そとこ)と言います。オレンジ色のずわいがにの卵や、紫色のたらばがに、花咲がにの卵などが売られています。そのまま食べたり、カナッペなどのオードブルに用いたりします。
蟹(かに)の選び方
はさみや足がそろっていて、持ってみてずっしりと重いものを選びましょう。
できるだけ新鮮なものを選んでください、時間がたつと味が落ち、食中毒の可能性も出てきます。また、産地直送フェアなどでは、冷凍や解凍を繰り返している場合もあるので注意してください。
活けがにが最上品ですが、おがくずの中でぐったりしているものより、むしろ、浜ゆでの直送もののほうがおいしいです。
生のものを買うときは、必ず生きているものを選んで下さい。かには傷みが早く、死後1時間で腐敗が始まります。
足の付け根を押してみたとき、へこまず身が詰まったもの。甲らを押してかたいものは、身のしまりがよいです。
ゆでてあるものは、腹部や間接の付け根が、黒ずんでいないものが良品です。
アンモニア臭のするものは、鮮度が落ちている証拠です。中毒の危険があるので、絶対に避けてください。
蟹(かに)の調理法
ゆでてあるものは、さっと湯通ししてから使いましょう。
冷凍ものは、身がシャーベット状になるまで自然解凍します。その後、鍋や煮ものにするときは、丸ごと放り込みます。サラダなどにするときは、さっと湯通ししましょう。
活けものは、おが屑などをきれいに洗い落とし、輪ゴムやたこ糸で脚やはさみを固定して、塩一つかみを加えた水に入れ火にかけます。沸騰後、15~20分ほどゆでて、脚や甲らが赤く変色したら、そろそろゆであがりの合図です。また、活けもののがざみなど高級品は、洗った後、おろして軽く塩を振り、13~14分ほど蒸しても良いでしょう。ゆでるのと違って水中にうまみ成分が流出するのを防げます。
基本的な食べ方
鮮度の高いものを、ゆでるか蒸すかして、殻から身を出しながら、ポン酢、しょうが醤油、二杯酢などをつけて食べます。
そのほかの食べ方
- 殻つきをぶつ切りにして、かにすきや味噌汁に。
- 殻つき脚を、焼きがにや天ぷらに。
- ゆでた身を取りだし、寿司だねや酢のもの、サラダなどに。
- 身をほぐし、サラダやかに飯、グラタン、コロッケ、シューマイなどに。
- 丸ごと酒蒸しに。
- 甲羅(こうら)にほぐした身と色々な具をつめ、甲羅蒸し、甲羅焼き、甲羅揚げなどに。
- 甲羅に酒を入れて温め、甲羅酒に。
- つめを、かにつめフライに。
がざみ(わたりがに)は活きたままぶつ切りにし、鍋ものや、具足煮、焼きがになどにします。
沢がには、まず、水につけて泥を吐かせます。水をよく切り、から揚げにして軽く塩をふり、前菜や酒の肴にします。軽く揚げたあと、酒やしょう油、みりんなどを加えて、煮上げてもよいでしょう。
中華料理では、かに玉として知られる茉蓉蟹(フーヨーハイ、フウロンシェ)やスープ、チャーハン、あえもの、シューマイ、鍋ものなど、広く用いられます。
身だけを使う場合は缶詰が便利です。
死んだかには、食中毒の危険性があり生食は要注意です、新鮮なうちにゆでるか蒸すなど、過熱して食べたほうが安全です。
冷凍ものは、自然解凍してから塩と酢を少量入れた熱湯でゆで直すか、蒸し直すと水っぽさがとれます。
二杯酢の作り方
基本は、酢1、しょう油1の割合で作ります。味を和らげるためにだしで割っても良いでしょう。酢3、しょう油1、だし2の割合で混ぜ合わせると、まろやかな味になります。
蟹(かに)の保存法
活けがには、傷みやすく、食中毒の危険性があるので、サッと洗ったあと、すぐに下ゆでしましょう。冷ましたあと、水気を十分にとり、冷蔵庫で2日間、冷凍庫で1週間ぐらい保存できます。
手足など、冷凍して売られているものなら、ラップや容器で空気に触れないようにすると、そのまま1ヶ月ぐらいは保存できます。
かにみそは、身よりも早く傷みやすいので、注意してください。
かにの身をほぐして冷凍保存しておくのもおすすめです。取り出してすぐに調理できて便利です。
蟹(かに)の栄養・効能
ヘルシー食として
かには他の魚と比べると、高タンパク、低カロリーです。種類によって違いますが、良質のタンパク質を15~20%も含み、脂質や糖分はあまり含みません。ダイエットに適した食品と言えます。
うまみのエキスがいっぱい
グルタミン酸、グリシンなどのアミノ酸は、かに独特のうまみに一役かっています。そのほか、ベタインやホマリンといううまみのエキス成分も含みます。これらのエキス成分は、死後時間がたつと酵素などの作用で分解し、食中毒成分になるので、新鮮なうちに食べましょう。
抗がん作用など
かにをゆでると赤くなるのは、強い抗酸化作用を持つアスタキサンチンというカロチン色素のためです。カロチンは摂取すると体内でビタミンAに変わり、動脈硬化やがんの予防、老化を抑えるなどの効果が期待できます。
タウリンの効果
かにには、アミノ酸の一種のタウリンが豊富に含まれています。タウリンは、血圧を正常にし、心肺機能の強化、貧血の予防、悪玉コレステロールの減少に効果があるほか、肝臓の強化、胆石や動脈硬化の予防、疲労回復や視力の向上などにも有効です。
解熱作用・解毒作用
体を冷やすため、解熱に有効です。また、アルコールの解毒作用もあるので、お酒を飲むときに食べると、アルコール性の肝臓障害などの予防に効果があります。
骨粗しょう症対策のカルシウム補給源として
かにの殻にはカルシウムが豊富です。殻ごと食べられる沢がになどは、有効なカルシウム源となります。
注目の成分、キチン質
かにの殻には、キチンやキトサンといったキチン質が大量に含まれています。キチン質は、体の自然治癒力を高め、免疫力を増強し、血圧を上げる作用をする物質を吸着し、体外に排出するといった働きがあります。また、血中コレステロールを下げる作用も確認されています。そのほか、ガン、肝炎、アレルギー疾患、糖尿病、腎臓病、心臓疾患、白内障、神経痛などに効果があるといいます。
因みに、かにの殻を粉末にしただけでは、キチンを抽出できません。かにの殻を、希塩酸及び希水酸化ナトリウム処理し、カルシウム、蛋白質を除去したものがキチンです。キトサンは、キチンをさらに濃水酸化ナトリウム処理して精製されます。
アレルギー症状のある人、冷え性の人は要注意
かに、特にかにみそは、アトピー性皮膚炎、じんましんができやすい、などのアレルギー体質の人は注意が必要です。からだを冷やすので、冷え性の人も量を控えた方がよいでしょう。
蟹(かに)の民間療法
冷湿布として
熱を帯びた湿疹や間接炎に、生のかにを砕いて湿布にすると、熱をとる効果があります。うるしにかぶれたときにも効果があるとされています。
蟹(かに)の歴史・由来
昔から身近な存在だったので、「さるかに合戦」など、かにの出てくる話が各地で多く伝えられています。
現存する日本最古の歴史書「古事記」には、すでにかにが登場しています。応神天皇が、宇治で美しい娘を見初め、酒の肴にでてきたかにに寄せて、恋歌を詠んだという描写があります。また、万葉集には、天皇にすすめるためかにに楡(にれ)の塩汁を塗って干物にするという歌があり、平安時代の延喜式には、かにを朝廷への献上品にしたという記述があります。
蟹(かに)の豆知識
雄と雌の見分け方
いわゆる「ふんどし」「まえかけ」などと呼ばれている腹部が、鋭角で幅の狭いのか雄、反対に丸みを帯びて、幅のひろいのが雌です。
「かにみそ」って、かにの脳みそのこと?
違います(笑)。かにみそとは、動物学的には中腸腺といい、人間でいうと肝臓とすい臓の機能を合わせもった器官のことです。見た目が味噌にそっくりなのでこの名が付きました。
かには食ってもガニ食うな
甲らをとると、両側に、ねずみ色のびらびらしたスポンジ状のものがひっついていますよね。これを「ガニ」と言います。これはかにの「えら」で、毒性はありませんが、まずくて消化も悪いので、普通は食べません。すぐに捨ててください。
かに缶の紙
かにの缶詰は、身が白くて薄い硫酸紙で包まれています。硫酸紙は、耐水性・耐油性をもっていて、かにの成分が、缶の鉄や錫と化学変化を起こして、身が黒くなったりガラス状になったりするのを防ぐ役割を果たしています。
かにの殻の利用法
かにの殻から抽出できるキチン質には、腐敗を防いだり、着色をよくするなどの特質があり、食物の添加物や、化粧品やシャンプーなどの保湿剤として利用されています。また、人間の肌などに馴染みやすく、副作用も無いことから、手術用の糸、人工皮膚、人工腱、人工靱帯、人口血管、コンタクトレンズなど、医療分野でも幅広く利用されています。現在、世界中で推定年間1000トンものかにの殻が、やっかいな生ごみとして廃棄されているそうです。これらが有効利用されることは、環境保護の面からも見逃せません。「地球上で大量に利用できる最後のバイオマス(生物資源)」と言われています。
毛がにのメジャーデビューは?
北海道の毛がにが特産品として有名になったのは、戦後のこと。戦争の影響で扱う商品がなくなってしまった長万部駅の立ち売り業者が、それまで顧みられることのなかった毛がにを茹でて売るようになったのがきっかけとなったそうです。それまでは、鰈(かれい)の漁に使う網をいためるじゃま者として扱われていました。
月夜のかには身入りが少ない
ということばがありますが、本当でしょうか?実はこれ、月夜、つまり満月の日は大潮になり、海が荒れるので、「満月の日に獲れたかには身が少ないということにして、危ない漁に出なくてもいいようにしよう」と、漁師のあいだで言われはじめたことに端を発するそうです。
かにに関することわざ(広辞苑より)
- 「かにの穴入り」あわてふためくさまのたとえ。
- 「かにの念仏」口の中でぶつぶつつぶやくこと。
- 「かには甲らに似せて穴を掘る」人は自分の分相応の考えや行いをするものだ、というたとえ。