大根 – だいこん – radish
大根(だいこん)の旬
品種によって違いますが、一般に一年中出回っている青首大根は、秋から冬にかけて(10月下旬~2月)が一番おいしい時期です。このころのものは甘みも強くみずみずしいです。
品種・種まき時期などの差により春、夏も出回ります。
大根(だいこん)の種類
大根は栽培する土の性質などによって根のかたちが著しく変化します。日本に入ってきた大根は、日本人の好みや日本の気候に合わせて次第に交配を繰り返しているうちに、世界でも類のない変貌(へんぼう)を遂げました。太さ、丸さ、長さ、大きさなどの外観の変化もさることながら、色や味、収穫時期にもそれぞれの地方の特徴を豊かに見せ、いわゆる「地大根」として、各地に特産の味をもたらして来ました。
桜島大根は世界で一番大きい大根で、直径が30~40cmにもなります。長さでは守口大根が世界一で2~3mにもなります。
品種
青首(あおくび)大根
全国各地で栽培され、現在大根の主流品種となっています。「宮重大根」の改良品種「対病総太り」という種類で、上から下まで太さがほぼ同じです。水分が多く柔らかく、しかも煮崩れしにくく、おろしにしても辛みが少ない他と比べて際立った甘みが特徴です。1本で首の部分はサラダなどに、真ん中はふろふき大根などの煮物に、しっぽの方はおろしにと、使い分けられる大根です。
三浦大根
大正年間に、地大根と練馬種を交配改良したもので、かつてはおでん屋の大根といえば三浦大根であり、正月のなますも三浦に限るという人は多いのですが、昭和50年代から「青首大根」が主流となり、今ではほとんどお目にかかれなくなった品種です。大きくなりすぎることが消費者から敬遠され、生産の現場でも、株間を多く取らなければいけない(青首で30cm間隔、三浦は40cm)ので同じ面積でも少ない本数しか作れないうえ、中太りの三浦大根は収穫の時に力がいるため、きつい作業となります、また店頭に並べるにもかさばって場所をとりすぎてしまうため、敬遠されるようになってしまいましたが、味覚に富んでいるため、今でもおでん屋さんや料理屋さんで使用されています。
聖護院(しょうごいん)大根
京都市左京区聖護院で、京都に古くからあった丸形の大根と、尾張の国の長大根(宮重大根)とが交雑してできた長円形の大根です。10~11月に収穫の秋大根に属していて、肉質の柔らかさ、豊富な甘み、水分が多くて繊維が少ない、という特質を備えて、煮物や漬物にうってつけの素材です。伝統的な京野菜で、「千枚漬け」が有名。
美濃早生(みのわせ)大根
夏大根の代表ともいわれてます。生産される時期も長く、3月~10月まで「春まき美濃」、「黒葉美濃」、「美濃つまり」など、品種も数10種に及ぶものが出回っています。播種してから50~60日で収穫できる上、外観もスマートで人気の品種です。 辛みがあって甘みが少なく、煮物に適しています。
練馬(ねりま)大根
尾張大根が原種とされますが、関東地方の土がむいているとされて、練馬地方で作り始められた大根です。大型で根の長さが70cmにもなり、葉が大きく広がっているのが特徴です。水分が少ないため、主にたくあん漬けなどの漬物にされます。現在は保存種として、少量が生産農家に委託栽培されているのがほとんどだそうです。
その昔、三代将軍家光公(五代将軍綱吉公という説もあります)が脚気(かっけ)を煩(わずら)われていた時に、練馬村から大根が届けられ、無事病気が平癒(へいゆ)したところから,大根が江戸城に納入されるようになり、それ以来、練馬村は大根一色になってしまい、生産過剰状態になってしまったそうです。すてるよりほかないとなったとき、品川東海寺の和尚さんであった沢庵禅師(1573-1645)が、禅宗の漬物方法としてのぬか漬けを教えたということです。
亀戸(かめいど)大根
東京の亀戸が特産でしたが、現在は江戸川区や葛飾区などで少量が作られる程度です。2月中旬から5月に出まわります。紡錘形の細長い小ぶりな大根です。 ほのかな香りと甘みがして、柔らかな葉といっしょに一夜漬けにすると美味しいです。
桜島(さくらじま)大根
世界最大の大根で鹿児島県桜島の特産物です。大きなものは20kgを超えます。やわらかく甘みがあって、煮崩れしにくい大根です。生で食べるほか、煮物、切干し、漬物など広く利用されます。粕漬けにした「薩摩漬け」が有名です。
守口(もりぐち)大根
もともとは大阪の守口で作られていて、現在は愛知県の特産物となっています。世界最長の大根で、長さが2m、根の太さは2cm程度、と非常に細長いのが特徴です。デパートなどのお歳暮コーナーで、「守口漬け」として、首の部分が青い紫色の細い大根がクルクルと入っている樽漬けを見かけます。
辛味(からみ)大根
長さが20㎝程度と小型の、おろし専用の大根です。そば、てんぷら、刺身などの薬味として生で使用します。最初はツンときて、やがて甘くなるのが特徴です。京都の特産で、昔は日常的に食していたそうですが、現在はスーパーなどには並べられず、入手困難な大根です。
源助(げんすけ)大根
石川で栽培されている種類で、辛みが少ないので煮物や漬物に使われます。金沢名物のだいこんずしが有名です。
ラディッシュ
直径2~3cmの球形で、赤玉がなじみ深いですが、白玉、赤長、白長などもあります。生食がほとんどで、カリッとした歯切れの良さが楽しめるため、彩りや付け合わせ、サラダによく利用されています。別名二十日大根とも呼ばれ、20日くらいで収穫できることからこの名前がつきました。10~3月頃が出回り期です。濃い緑色の、ピンとした葉っぱのついているものが良品です。直径2cm前後、直根が細くヒゲ根のすくないものを選びます。
そのほか、品種とは違いますが...
かいわれ
12~14cmまで伸ばした大根の芽で、貝割菜(かいわれな)ともいいます。和風テイストのほか、肉類を使ったサラダにもよく合います。四十日という品種を使用します。
春大根
2~3月頃に出まわるものを春大根といます。 大根は冬に出荷されるものが大部分ですが、初冬に種子を蒔き2~3月に出まわるものを特にこう呼びます。千葉、埼玉が主産地です。
まびき菜
根が肥大する前に間引いたもので、おろぬき大根とも呼ばれています。葉が柔らかく、おもに葉を食べるもので、もみ漬けものや汁の実などにされます。
大根(だいこん)の加工品
たくあん漬け
干しだいこんをぬかで漬けたものです。名前の由来は、江戸時代に沢庵和尚が漬けたからと伝えられますが、たくわえ漬けがなまったものとも言われています。
各地の名産漬物
秋田のいぶりたくあん/東京のべったら漬け/石川の七尾たくあん/岐阜の守口漬け/愛知の渥美たくあん/京都の千枚漬け/京都の聖護院大根のぬか漬け/和歌山の紀ノ川たくあん/鹿児島のつぼ漬け/鹿児島の薩摩漬け
干しだいこん
大根を乾燥させたもので、天日乾燥することにより、甘みと風味が加わります。青首大根や練馬系の大根が多く使われます。 干し大根には、千切りにして干した切り干しと、蒸して乾燥させた蒸し干しがあります。冬の日光、寒風を浴びた寒干し大根が良品です。
干葉(ひば)
大根の葉や茎を陰干しにしたものです。雪国で、冬場に少ない青菜の代わりの貯蔵菜として利用されました。細かくきざんで湯通しし、炒め物や汁物、干し菜飯などに利用します。
大根(だいこん)の選び方
葉つきがあればぜひ葉つきを選んで下さい。葉にも栄養がたくさんあります。
葉に勢いがあり、美しい緑色のものを選びます。
葉のつけ根の真ん中に大根の芽がありますが、それが茎になるまで伸びているのは育ちすぎで、おいしくありません。
葉の茎を折ってみて、そこがスカスカだったら大根自体にもすが入っています。
葉が切り落とされているときは、葉の折り口がみずみずしく新鮮なものを選びます。
根の部分は白く、きめこまかく、張りと光沢のあるものが新鮮です。
ひげ根やくぼみがなく、丸身が円形で、持ってみてずっしりと重みがあるものを選びます。
大根(だいこん)の調理法
大根調理のこつ
葉は買ったその日のうちにすぐ調理します。(浅漬け、菜飯に)
首の部分は辛みが弱く、またビタミンCが多く含まれているので生食用に最適。塩をふってさっともんだり、だしをきかせたしょうゆにつける即席漬物にしてもおいしいです。(なます、サラダ、おろし、刺し身のつまに)
中央の部分は最も甘みが強く一番おいしいところで、太さもそろっているのでどんな煮物にも最適です。大根の味を生かした薄味の煮物にすると、美味しさが引き立ちます。(おでん、ふろふき大根に)
先端の部分は辛みが強い部分なので、味の濃い料理向き。辛みは煮ると、甘みに変化します。辛みのきいた薬味や切干大根などに向いています。(味噌汁の具、炒め物、味の濃い煮物、ぬかづけ、薬味に)
茹でる時は、米のとぎ汁か米粒を入れるとアクが抜けて甘みが増すといいますが、最近の品種ではほとんど直火でも良いようです。
大根は淡白な味のため、脂の多い食材との相性も抜群です。ブリやばら肉と煮ると、肉のくせをやわらげ、コクがでて味わい深くなります。
大根(だいこん)おろしについて
大根の辛み成分は、イソチオシアナートと呼ばれるもので、すりおろした時に細胞が破壊されることで辛みとなります。この成分は、大根の首の部分よりも先端のほうに多く含まれています。イソチオシアナートは揮発性であるため、すりおろした後そのまま放っておくと辛みはなくなってしまいます。ビタミンCの損失も時間とともに多くなるので、なるべく食べる直前におろします。
大根は中心より皮に近い方が水気が少なくビタミンCも多いので、なるべく皮ごとおろしましょう。
しょう油やぽん酢などをかけて食べますが、もみのり、しらす干し、かつおぶしをのせてもおいしいです。
辛みが強いときは、水でさらし、ふきんで軽くしぼると良いでしょう。
大根おろしと人参おろし(とうがらしの場合もある)をあわせるもみじおろしは、人参のもつビタミンC酸化酵素によって大根のビタミンCが破壊されますが、食欲を増進させる働きもあるので、あまり気にせず彩りをつかう事も良いでしょう。
甘い大根(だいこん)おろしの作り方
葉に近い方を使用し、大根を垂直に立て、ソフトタッチでまあるく円を描く様におろします。横向きにしたり、縦横方向が定まらないのもダメです。
辛い大根(だいこん)おろしの作り方
先端部分を使用し(しかも夏場の方がより辛い)、おろし金に対して一直線におろします。力強くおろすことにより細胞がより細かく破壊され、辛み成分が活性化します。また、辛みはすぐに飛んでしまうので、早めにいただくことです。
大根(だいこん)の保存法
保存の適温は5℃前後です。
泥付きなら土の中もしくは新聞紙などに包んで暗い場所に、洗った物は適度な湿度を保つためにビニール袋、新聞紙、ラップフィルムなどで包んで冷蔵庫で保存してください。新聞紙に霧を吹いておくといいでしょう。
葉を付けたままにすると、葉から水分が蒸散してしまい、身の水分も奪ってしまって内部に「す」が入る原因にもなりますので、葉をつけ根ギリギリのところで切り離す方が良いでしょう。
葉はビニール袋に入れて冷蔵庫で保存します。すぐに使いきれないようなら、さっとゆでて使い易い長さに切り、密閉容器で冷蔵保存するか、細かくきざんでから密閉容器に入れて冷凍しておくと、料理の仕上げの青みに利用できるので便利です。陰干しして干し葉にするのもよいでしょう。
冷蔵では根も葉も4~5日で使いきる方が良いでしょう。
大根おろしは水気をきって冷凍保存しておくことができます。予め小分けにしておくと便利です。
大根(だいこん)の栄養・効能
大根の葉は緑黄色野菜、根は淡色野菜です。
アブラナ科野菜の大根には辛み成分のイソチオシアナートが豊富に含まれており、血液をサラサラしたり、殺菌作用などがあります。でんぷん分解酵素(アミラーゼ)などの消化酵素も豊富に含まれていて、食べ物の消化吸収を促進します。食物繊維も多く含みます。ビタミンCも豊富ですが、特に皮には中心部より2倍ものビタミンCが含まれます。
葉の部分には根よりずっと多くのビタミンCを含み、ビタミンA(カロチン)も豊富で、さらに、ビタミンB1、B2、カルシウム、ナトリウム、リン、鉄などの成分を含みます。
さらに、乾燥させた切干大根には、生の大根より、ビタミンB1、カルシウム、鉄分を多く含み、食物繊維やミネラル供給におすすめです。
消化促進
大根の根にはでんぷん分解酵素(アミラーゼ)が含まれているため、食べ物の消化を促進し、げっぷ、胸焼け、胃のもたれ、胃酸過多、二日酔いなどの症状に効果的です。胃の弱い人は、食事に大根おろしを添えて食べると、消化がよくなります。昔から「もちの食べ過ぎには大根を食べるのが良い」と言われるのもこうした効果からきたものです。
大腸がん予防や吹き出物予防
大根に含まれるオキシダーゼ酵素には解毒作用があり、発がん性のある焼き魚のこげを抑制する働きがあります。焼き魚を大根おろしと一緒に食べるのは非常に良い取り合わせなのです。
また、豊富な食物繊維が腸を整え、腸内の老廃物を一掃するので、大腸がんの予防や吹き出物などに効果があります。
葉に多く含まれるβカロチンにも、がん予防の効果があります。
血液をサラサラに
大根の辛み成分のイソチオシアナートには、肉食生活でドロドロになった血をサラサラにし、血栓を予防する働きがあります。肉料理を食べる時には、アブラナや大根を多く食べると良いのです。
殺菌作用
大根の辛み成分のイソチオシアナートには、白血球を活性化し、また人間の体に害を及ぼす細菌を殺したり、力を弱めるなどの殺菌作用があります。 お弁当などにアブラナ科サラダに、大根とワサビをおろしたドレッシングをかけたものを入れると、アブラナ科野菜から蒸発するイソチオシアナートの殺菌作用が他の食べ物にまで効果を与えるほどです。
消炎作用など
おろし汁には消炎冷却効果があり、やけどや歯茎のはれ出血、頭痛、発熱、のぼせなどの外用薬として利用できます。
せき、たんに
昔から「だいこんあめ」として、ビタミンCや酵素、はちみつの相乗効果でのどの炎症を鎮め、せきやたんを取り除いてくれます。
大根(だいこん)の民間療法
冷え性、神経痛、腰痛、肩こり
葉を陰干しして乾燥させて干葉にし、風呂に入れるとからだが暖まり、冷え性、神経痛、腰痛、肩こりなど効果があります。
消化をよくする
大根もちや大根おろしは、胸やけや胃もたれをおこしにくくします。特に口内炎ができやすい人にはおすすめです。 ただし、大根は生で食べると、体を冷やす作用があります。胃の冷えやすい人は、煮たりして食べましょう。
二日酔いに
大根は二日酔いで弱った肝臓や胃腸の働きを高め、不快感、食欲不振を取り去る効果があります。大根に含まれているビタミンCには、肝臓の働きを助ける作用があるからです。利尿作用もあるため、血液中のアセトアルデヒドの排泄も早めます。
大根おろしのしぼり汁にはちみつを加えたものが効果的です。大根おろしそのままでもよいでしょう。
また、大根おろしにすりおろしたしょうがを加え、しょうゆをかけてたべても良いでしょう、胃が落ちつき、症状をやわらげてくれます。
鼻づまり
辛くない大根おろしのしぼり汁を脱脂綿にしみこませて、鼻孔に左右交互に繰り返しつめると効きます。
咳き止めに
大根を5㎜幅の半月切りか、いちょう切りにし、ふたのある容器にいれ、はちみつをひたひたになるくらいに注ぎます。ふたをして一晩おくと汁があがってくるので、スプーンなどで静かにすくいとり、盃に一杯ほどそれを飲みます。飲みにくい場合はお湯で割ってのみます。
のどの痛みや咳きに
コップ1/4くらいの大根おろしに、おろししょうがを少々加え、熱湯を注いで温かいうちに飲みます。はちみつで甘くしたり、レモンのしぼり汁の酸味で飲みやすくしてもよいでしょう。
打ち身、肩こり、筋肉疲労に
大根おろしを布にのばして湿布すると、打ち身、肩こり、筋肉疲労などによいとされています。
大根(だいこん)の歴史・由来
大根のルーツは諸説ありますが、原産地はヨーロッパ地中海沿岸から中央アジアといわれています。エジプトでは、4000年以上も前にピラミッド建設の人夫たちの食料だったそうです。
日本へは稲作文化とともに中国から伝わり、有史以前から栽培が行われていたそうです。 日本での大根の最初の記録は「日本書紀」に「於朋花(おほね)」の名前で記されています。この言葉が大根(おおね)に転じ、さらに音読みとなって現在の「だいこん」の呼称となりました。
栽培が盛んになったのは江戸時代に入ってからで、かなりの品種が改良されたほか、漬物や切り干しなどの加工が盛んになり、飢饉対策として栽培が奨励されました。
大根は春の七草のひとつで「すずしろ」の別名で呼ばれています。「涼白(すずししろ)」の意味で「すずし」は小さい「しろ」は根が白いためという説、「すずな(=蕪)」の代わりに用いるので「すずなしろ」の意味からきたという説など、その語源には諸説あります。
大根(だいこん)の豆知識
大根役者(だいこんやくしゃ)
芝居が下手な役者を「大根役者」と言いますが、大根をいくら食べてもお腹をこわさないので、「あたらない」という意味からきた、という説が有力なようです。
大根の「す」って?
大根の「す」は空気穴の役目をするもので、養分や水分の不足が原因です。良い状態のものでも、時間がたてば、だんだん「す」入りになります。根の部分をたたいて鈍い音がするものは「す」入りの可能性が高いのでさけた方が良いでしょう。
黒い大根?
大根といえば白い根っこ...だけと思ったら大間違いです。
大根は世界中で広く栽培されていて、品種の多様化も野菜の中で群を抜いています。ヨーロッパの大根にはラディッシュのような紅色のほかに、紫、茶、灰色、褐色、なんと黒い品種もあるのです。使い方は、主に生でサラダとして食べられているそうです。