鱈 – たら – cod fish

鱈(たら)の特徴

漢字で大口魚とも書くように口の大きい魚で、魚の中でも特に大食漢として知られています。「たら腹食う」の語源にもなっています。

北日本以北のやや深海に生息し、外海を回游する沖鱈と回游しない根鱈(または磯鱈)とがあり、小魚、甲殻類、貝などを食べます。日本近海のほか近似種が北大西洋に分布して、北欧などの重要な魚類の一つとなっています。

種類は真だらとすけとうだらなど約90種類が日本近海に住んでいますが、普通たらと言えば、真だらをさし、たらこはすけとうだらの卵のことです。また銀だらと呼ばれるものは、あいなめに近いものでたらの種類とは違います。

鱈の漁獲高はいわしと一、二を争う量で日本人には親しみのある魚です。

鱈(たら)の旬

産卵期の冬が旬です。

鱈(たら)の種類

真だら(まだら)

(別名)あかはだ、すいぼお、ぽんたら
沿岸の浅場に住んでいて全長1m位、体重20㎏以上になるものもあります。寿命は13~14年で4年位で成魚になります。1~2月に産卵期を迎えます。厳冬期の鱈ちりは絶品です、白子(雄の精巣)も美味で珍重されます。

すけとうだら

(別名)すけそうだら
真だらより小型細身で体長約60cm。すけとうだらの身は水分が多いので、鮮度が落ちやすく、調理しても荷崩れをおこしやすいので、かまぼこやちくわなどのねり製品の原材料として使われることが多いです。でも新鮮なものは真だらより美味とか。身よりも雌の卵巣を塩蔵したたらこや唐辛子で漬けたからし明太子の方がなじみ深いようです。

鱈(たら)の加工品

棒鱈(ぼうだら)

干だらの一つで、真だらを尾をつけたまま三枚におろし、頭と腹の部分をとって天日で堅く感想させて作ります。おせち料理におなじみの棒だらは、実は北海道稚内市の特産物です。稚内地方の早春は、晴れて湿度が低く風が強い日が多いため「棒鱈」の製造に一番良い条件となっています。昔この地方で作られた「棒鱈」が遠く京都まで運ばれて、京都のお正月になくてはならないものになったようです。

白子(しらこ)

真だらのオスの精巣。雲腸(くもわた)、雲子(くもこ)、菊子(きくこ)とも呼ばれます。鍋に入れても、焼いても、天ぷらでも、湯引きしてポン酢でも美味です。

たらこ

すけとうだらの卵巣を塩漬けにしたものです。塩漬けたらこを赤唐辛子を使った調味料に漬けこんだものはからし明太子となります。焼いて食べたり、にぎりの具や、あつあつのご飯に非常に合います。

かまぼこ等の練り物

元々は、はも、ひらめ、かれい等の白身魚を混ぜて作りますが、最近はすけとうだらの冷凍すり身を使用して作ることが多いため、味が均一になっています。

チャンジャ

真だらの内蔵と身のキムチ漬けです。珍味、焼肉屋さんで良く見かけます。凄く辛いが美味しく酒の肴に最適です。

肝油(かんゆ)

肝臓からとったの油です。ビタミンAとDが多く含まれます。

その他

塩だら、かす漬け、干だらのほか、鯛のかわりに鯛みそや鯛でんぶにします。

鱈(たら)の選び方

目が黒々と透き通っているもの、皮が光沢のあるチョコレート色をしていて張りのあるもの、えらが鮮やかな紅色をしているものを選びます。

切り身は身に透明感があり、ほのかにピンクがかかった弾力のあるものが鮮度の良いものです。逆に身が白く不透明なもの、皮が白っぽいもの、アンモニア臭のするものは鮮度が落ちているので避けます。

オスの方が白子があるため高価で、味も良いです。

白子は、透明感があって身がしっかりしているものが新鮮です。身くずれしているものは鮮度が落ちています。

たらこは、べたつかず透明感のあるもの、皮が薄く身くずれしていない大きいものを選びます。部分的に緑色をしていたり、膜が破れているものは鮮度が落ちているので避けます。

鱈(たら)の調理法

鱈は自己消化と死後硬直が早いため、生のものはご注意を。料理に応じて下処理を行って下さい。

春先の新鮮なものにはときおり糸くずのような寄生虫アニサキスがついていることがあります。加熱すれば心配ありませんが生食する場合にはご注意ください。

鱈自体は淡白な味なので味付けには工夫が必要です。コクのあるクリームソースを使ってグラタンやシチューに。あっさり仕上げるなら他の魚介類や野菜とブイヤベースなどがいいでしょう。その他、フライ、ホイル焼き、煮付け、炒めもの、ソテー、ムニエル等、様々な調理方法で美味しく食べられます。

時期的にオススメなのは鍋物です。身体を暖めてくれるちり鍋や寄せ鍋など、お鍋にもってこいの魚です。

身が柔らかく鮮度の落ちが早いので、刺身にはむいていませんが、ごく新鮮なものは刺身や昆布じめにします。

鍋に使っても煮付けても鱈の場合必ず泡がでてきます、これをこまめにすくってから、味付けするのがコツです。

白子は食べやすく切ってポン酢で食べます。柔らかめの場合は少し霜降りの状態でいただきます。その他椀だねや鍋物などでも美味です。

棒鱈の料理のこつ

乾燥させてつくられている棒鱈は、戻して使わないといけません。その戻し方の手順です。

棒鱈は太めのものを求めます。真水に、5~7日間くらい浸します。水は毎日変えてください。戻ったら、綺麗に水洗いします。腹の部分の黒い薄皮などは、この時に丁寧に取っておきます。一口大に切り、多めの水で煮立てて5分ほど沸騰させたあと、火を消します。そのまましばらく冷ました後、新しい水に変えて6~7時間おいておきます。この後好みの味付けをしてください。

鱈(たら)の保存法

冷蔵庫で保存するには、生だらをおろして薄く塩をあてた後、ざるに並べてパットに入れ、ラップして冷蔵庫に入れると、余分な水分が出て身がしまり、鮮度が保てます。

冷凍保存する場合は、一切れづつラップファイルで包んで、細胞組織を破壊しないように急速冷凍してください。

鱈(たら)の栄養・効能

淡白な味の鱈は脂質は少ないため老人食や離乳食に向いています。

ビタミンA、D、Eは白身魚にしては多いです。ビタミンDは、体内でカルシウムとリンの吸収を高め、血中でカルシウムとリンのバランスを調節してくれます。その為、骨粗鬆症や虫歯を防ぐはたらきがあります。

たらこにはパントテン酸が多く含まれ、若さを保つはたらきがあります。

たらこは亜鉛を多く含みます。亜鉛が不足すると免疫機能の低下や味覚異常などの症状として現れたりもしますので、とても重要な元素です。

粘膜の保持、夜盲症などに効果

他の魚類に少ないビタミンA・Dが豊富です。ビタミンAは視力の維持や皮膚や粘膜の健康に。ビタミンDは骨や歯を丈夫にするのに欠かせない栄養素です。

冷え性、風邪予防など

身は低脂肪・高蛋白で、胃腸を温め、血行をよくし、冷え性・風邪予防・体力のない人など、冬場にピッタリの食材です。

夜盲症などに

たらの肝臓はビタミンAとDの宝庫で、昔から夜盲症や結核、虫下しの薬として珍重されてきました。

骨粗鬆症予防に

白子にはビタミンDが非常に多く含まれています。ビタミンDの役割はカルシウムの吸収の補助で、いくらカルシウムをたくさん摂取してもビタミンDが不足していると吸収効率が悪くなってしまいます。人間はビタミンDを日光浴により体内で合成できるのですが、寒い時期には日光浴もままならないので、食べ物でしっかり摂取しましょう。

味覚障害に

たらこには、ナトリウムが多いという欠点はありますが、亜鉛を極めて多量に含むので味覚異常や不妊症に効果があります。

鱈(たら)の豆知識

「たら腹食う」の語源

鱈という魚は別表記で大口魚と書くぐらい、魚の中でも特に大食漢として知られています。しかも単なる大食漢ではなく、エサの種類も選ばずに何でもその胃袋に詰め込んでしまうのです。エサの代名詞のようなイワシはもちろんのこと、カニ、エビなどの甲殻類やヤドカリ、貝類といった堅いものまで、どんどん食べてしまいます。ちなみに魚ならば、自分の体長の2/3くらいの大きさのものは折りたたむようにして胃袋に入れてしまいますし、100種類もの魚介類が胃から出てきた例もあるほどです。

こんな鱈の大食ぶりと、その大きなお腹から「たら腹食う」という言葉が生まれたのですが、その大食にも理由があります。鱈は冬以外は水深150mもの深海に生息しているのでエサには恵まれず、食べられる時に腹一杯食いだめしておく必要があるからなのです。

ちなみに、鱈はその大食漢の影響か、すぐに胃潰瘍になってしまうそうです。しかし、鱈の胃潰瘍は自然に治るので、それで死んでしまうというようなことはないそうです。

漢字で魚偏に雪の訳

魚偏に雪と書くのは、淡泊な身が雪のように白いことや、雪の降る頃に脂がのって美味しくなること、初雪の後にとれ出すため、などが理由だと言われています。ちなみに鱈の字は国字で中国語にはありません。

明太子のメンタイって?

メンタイというのは、朝鮮語ですけとうだらのことで、そこから、唐辛子漬けのたらこを、「辛子めんたい」と呼ぶようになったそうです。