桃 – もも – peach

桃の旬

6~9月上旬頃まで出回りますが、味のよいのは7月中旬~8月に並ぶものです。

桃の種類

大きくは、果肉の色の違いにより白肉種(白桃)と黄肉種(黄桃)とに分けられます。白肉種は果肉がとろけるように柔らかく多汁で、主に生食用として「白桃」、「白鳳」、「大久保」などの品種があります。黄肉種は果肉が固くゴム質で、主に缶詰などの加工用として栽培されています。

桃の品種

大久保(おおくぼ)

昭和初期に岡山県の大久保五郎氏により育成された品種で、かつては桃の代表品種でした。球形の大型で乳白色に桃色を帯びた白肉種です。淡白な甘みで上品な味がします。缶詰などにも使われますが、近年栽培が減少しています。市場へは7月下旬頃に出回ります。

白桃(はくとう)

1899年に岡山で育成されたわが国の桃の代表的品種です。果実は大きめで丸々としており、果皮は赤みを帯びた白色で、整った姿と淡い美しい色合いはまさに女王と呼ぶにふさわしいものです。果肉は緻密でねっとりと甘く、多汁です。完熟しないと柔らかくならないので輸送性にも富んでいます。晩生種で8月に出まわります。

清水白桃(しみずはくとう)

1932年に岡山県の、白桃と岡山3号の混植園で偶然に発見された白肉種です。主に有袋栽培で無着色に栽培され、真っ白な桃として市場に出まわります。緻密な果肉は多汁で芳香があり、柔らかいのですが食味は優良です。7月中旬~8月上旬頃に出まわります。

川中島白桃(かわなかじまはくとう)

長野県で1971年に育成された白肉種です。大玉で日持ちするため、栽培量が増加しています。果皮、果肉ともに色濃く、果肉はやわらかい繊維質で甘みも多く多汁で食味は良好です。晩生種で8月中下旬に出まわります。

白鳳(はくほう)

昭和の初めに神奈川県農業試験所で、白桃に橘早生を交配して生まれた白肉の主力品種です。果肉は緻密で果汁に酸味が少なく、多汁で日持ちもします。7月中旬~8月中旬にかけて出まわります。

日川白鳳(ひかわはくほう)

1981年、山梨県で発見された白鳳の枝変わり品種で、果肉は白色で果汁も多く良質です。日持ちがよいこともあり、近年栽培が増加しています。7月上旬に出回る早生種です。

ネクタリン (別名)油桃、ズバイ桃

桃の表面のうぶ毛が退化して無くなった桃の変種です。果皮はつややかな光沢があり、濃厚な赤色をしています。果肉は白色や黄色がありますが、現在は黄色の流通が多いようです。果肉は柔らかく、甘みが強くて濃厚な独特の味わいで人気が高まっています。「早生ネクタリン」、「フレーバートップ」、「ファンタジア」、「秀峰」、「興津」などの品種が出まわっています。ネクタリンの名は、ギリシャの神々の飲む美酒、ネクターに因むのだそうです。

蟠桃(はんとう) (別名)座禅桃(ざぜんもも)

押しつぶされたような扁平状の姿が独特ですが、外観に似合わず食味は良好で、贈答用としても人気があります。栽培が難しいため日本ではほとんど栽培されていません。

黄金桃(おうごんとう) (別名)ゴールデン・ピーチ

黄桃と言えば、かつては缶詰専用でしたが、最近は生で食べられるやわらかい果肉のものが登場しています。黄金桃もその一つで、濃厚で甘み香りともにが強く、食味は良好です。8月下旬~9月下旬頃出回ります。

その他の主な品種としては、「加納岩白桃」、「浅間白桃」、「大和白桃」、「一宮白桃」、「八幡白鳳」、「長沢白鳳」、「あかつき」、「錦」、「麗鳳」、「一宮水蜜」、「ゆうぞら」、「あきぞら」、「紅清水」…などの多様な品種が栽培されています。

桃の選び方

見た目は?

表面が平均に色づき、はっきりとした赤色のものが良いでしょう。黒ずんだものは熟し過ぎているので避けましょう。

うぶ毛が密に残っているものは新鮮な証拠です。(ネクタリンのように、元々うぶ毛が無い種類のものもあります)

ひっくり返して見て、軸の周辺が青っぽいものは未熟なので避けましょう。

いびつな形のものは、甘い部分に偏りがあります。ふっくらとした張りがあるものを選びましょう。

傷に注意

桃は非常にデリケートな果実で、傷がついていたり指で押したりするとそこから傷んでしまいます。お店で桃を選ぶときもなるべく手で押したりしないようにしましょう。

飛び出た部分が軽く当たっただけでも傷がつくので、そういう意味でもできるだけ形の良いものを選びましょう。

甘い香りは完熟のサイン

完熟の桃は香りが強くなるので匂いで容易に見分けることができます。

桃の食べごろ

ひっくり返してみて、軸の周りの青みが消えて乳白色になってきたころが良いでしょう。

香り

桃特有の芳香が強くなってきたころが食べごろです。

触感

桃にそっと指を当て、柔らかさが感じられたころが良いでしょう。爪先で皮をすっとはがせるぐらいが目安です。

桃の食べ方

おいしい食べ方

食べる分だけ2~3時間ほど冷蔵庫で冷やして食べてください。あまり冷やしすぎると低温障害を起こして、甘みや香りが無くなってしまうのでご注意ください。

冷蔵庫から出した後、外気に触れて汗をかくとすぐに味が落ちてしまうので早く食べましょう。

食べる前に、うぶ毛を軽く水洗いし、皮をむくとよいでしょう。

どこが甘い?

一番甘くなるのは、日差しを最もたくさん浴びるお尻の部分(花落ち部分:軸の反対側)、次に甘いのは、側面の皮に近い部分です。種に近づくほど少しずつ甘みが落ちていきます。そのため切り分ける場合には、縦切りにすると公平に分けられます。

皮のむき方

皮は手でむくのがベストなのですが、どうしてもむきにくいときはトマトと同じように湯むきすると簡単に皮をむくことができます。お尻の部分に包丁で十字に軽く切れ目を入れ、さっとお湯にくぐらせてすぐに氷水で冷やします。あとは手で簡単にむけます。

皮をむいたあとはすぐに茶色く変色してきます。これは、レモン汁をふりかけると防ぐことができます。

種の取り方・切り方

まず、桃の溝に包丁入れて、種に沿って縦にぐるりと切れ目を入れます。次に両手で軽くにぎり、くるりとひねって二つに切り離します。最後に片側に残った種をスプーンなどでえぐり取ります。

桃の果肉は柔らかいのですが皮は意外と固いので、皮の上から包丁を入れるときは、押し切りではなく引き切りにすると果肉はくずれません。

たくさん手に入ったときは

シロップ煮やジャム、果実酒などにすると良いでしょう。また、ピューレにしてババロアやシャーベットに、切り分けてヨーグルトに入れたりしても美味しいです。

桃の保存

日保ちはしません

なるべく早く、2~3日中には食べきるようにするのが賢明です。

固い桃は

常温で1~2日ぐらい置いてから食べごろになるのを待ちます。

とにかく慎重に

面倒でも、お店で売ってるときの緩衝材や新聞紙などで一個づつ包んで、桃どうしが接触しないようにしましょう。

日光や乾燥にとても弱く、風に当たっただけでもすぐに萎れてしまいますので、袋に入れておきましょう

冷蔵庫での保存

冷やしすぎると味が落ちるので、なるべく室温で保存し、食べる直前に冷蔵庫に入れるようにします。どうしても長時間冷蔵庫に入れる場合は、ひとつずつ新聞紙で包み、ボール箱などに入れておきます。

桃の栄養・効能

主な栄養成分

果実の主成分はショ糖などの糖質で、クエン酸やリンゴ酸などの有機酸も多く含まれています。果実の中ではカリウムが多く、B1、B2、C、Eなどのビタミン類やナイアシン、カルシウム、亜鉛、銅なども含みます。ペクチンなどの水溶性食物繊維も豊富です。

疲労回復や夏バテ予防に

豊富に含まれるクエン酸やリンゴ酸などの成分が疲労の回復に直接はたらくほか、酸味が胃液の分泌を高め食欲増進に有効です。また、たっぷり含まれる果汁と強い香りが食欲を増進させる作用もみのがせません。

高血圧の予防に

比較的多く含まれるカリウムのほかにナイアシンやカルシウムが、血圧を上昇させるナトリウムを対外に排出する作用をして高血圧の予防にはたらきます。

便秘解消に

ペクチンなどの食物繊維は、腸のはたらきを活発にして便秘の改善に効果があるほか、血液中のコレステロールを減少させ、生活習慣病の改善と予防につながります。

がん予防

カロチンやフラボノイド、ビタミンCといった成分は抗酸化物質としてはたらき、がん予防に重要な役割を果たします。

また、豊富な食物繊維は腸内の老廃物質を便と共に対外へ排出し、大腸がん予防に大いに効果があります。

老化防止に

ビタミンEは老化防止に効果のある成分です。全身の血液循環を活発するほか、強力な抗酸化作用は老化の原因となる過酸化脂質が体内に生成されるのを妨げます。

あせもや肌あれに改善に

桃の葉にはカリウムやシュウ酸マグネシウム、タンニン、フラボノイドなどといった有効成分が含まれており、古くから桃湯として入浴剤に使われます。あせも、湿疹、ただれ、かぶれ、虫さされなど肌のトラブルに効果を発揮します。陰干しにしてよく乾燥させた葉100~200gほどを木綿の袋に詰めてお風呂に入れ、水からわかして使います。

利尿作用

桃の花には利尿作用のあるケンフェロールが含まれています。花を陰干しにして細かくもみほぐし、5gほどに水を注いで飲むと効果があります。

漢方では半開きのつぼみを乾燥させたものを「白桃花」と言う薬草として用い、利尿作用のほか、緩下剤として便秘解消やむくみをとるのに使用します。

更年期障害に

種の中の核中にある仁(じん)は漢方で桃仁(とうにん)と呼び、女性の血の道を治す重要な成分として扱われています。桃仁は女性の更年期障害や生理不順などにすぐれた効果を発揮します。

魚の食あたりにも効果があり、特にまぐろにあたったときには抜群の効果を発揮します。これも血を新しくする効用によるものです。

種をホワイトリカーに漬け込んで常飲すると、肩こりや美肌に効果があるそうです。

鎮静作用

ナイアシンには精神の安定をはかる作用があるほか、桃の甘い香りには、脳をリラックスさせて強迫観念を和らげる効果があるそうです。

桃の歴史

原産地は中国黄河上流の甘粛(かんしゅく)省や陜西(せんせい)省一帯の高原地帯です。桃は植物学的にはアーモンドに近い種で、野生種はアーモンドと同じであったと推測されています。

栽培はかなり古くから行われていたようで、孔子の書物にすでに出ていることから紀元前5世紀頃ではないかと言われています。

紀元前にシルクロードを経てペルシアに伝わり、その後ヨーロッパ諸国に広まりました。17世紀にはアメリカにも渡っています。

日本にも古くから小さくて固い実をつける桃が自生しており「古事記」にも記載されています。平安鎌倉時代頃には水菓子として用いられていたようです。

江戸時代には各地で栽培されましたが、明治時代にヨーロッパから導入された品種や中国から伝わった上海水蜜、天津水蜜など水蜜系の品種を元に育成されたものが、現在の品種の中心になっています。

缶詰用の黄色い品種は第二次世界大戦前にヨーロッパ系と東洋系の交雑によって育成され、戦後に改良が進められて現在に至っています。

桃の豆知識

桃の語源

桃の語源にはいくつかあって、果実の事を「真実(まみ)」と言うのが転じたという説や、熟して色づいた木の実と言う意味の「燃実(もえみ)」が転じたという説、沢山の実がなると言う意味の「百(もも)」が語源だという説などがあります。

また、大昔は果実のことをすべて「もも」と呼んでいたのですが、その中でも桃が一番おいしかったので「もも」と言う名前を独占したのだ、と言う説も有力視されています。

長寿のシンボル

古くから中国では桃に長寿の効能があると考えられ、「仙果」と呼ばれて神聖視されてきました。

中国人の憧れる理想郷を、桃の花の咲き乱れる「桃源郷」と呼ぶのも同じ思想からきています。ちなみに桃源郷を最初に詩に詠んだのは六朝時代の詩人、陶淵明(365-427)です。

「西遊記」の中でも、孫悟空が仙人の桃を無断で食べて不老不死になったというエピソードが盛りこまれています。

現在でも、中国のお祝いのテーブルには桃の形をしたまんじゅうが必ず並びます。

邪気をはらう

日本では邪気をはらう果実とされて、ひな祭りの祭壇に飾られたりします。

日本神話では、黄泉の国で伊弉諾尊(いざなぎのみこと)が黄泉醜女(よもつしこめ)に追われたときに桃の実を投げつけて難を逃れた話が出てきます。

誰もが知ってる昔話「桃太郎」で、桃から生まれた桃太郎が鬼を退治するという話も同じ思想から生まれたのでしょう。

桃栗三年柿八年

ということわざがありますが、現在の栽培法では果実を接ぎ木で増やすのが普通なので、桃や栗は2年目、柿や梨は3年目ぐらいから実をつけ始めます。

果樹を種からではなく接ぎ木で増やす理由は、遺伝学上、種をまいても親木の性質が完全に子供に伝わらないためです。接ぎ木ならば完全に親木と同じ性質の木が育ち、同じ品質の果実が収穫できるというわけです。