椎茸 – しいたけ – Japanese mushroom

椎茸の特徴

今や「shiitake」の名で世界中で通じる日本を代表するきのこで、世界の三大栽培きのこの一つにも数えられています。

今日では、中国などでも集中的に栽培されていますが、もとから日本での栽培が一番多く、品質も優秀で、長く日本の伝統食品として知られていました。現在の栽培法も日本で確立されたものです。

シイ、ナラ、クリ、カシなどの枯れ木に春・秋の年に2回自生しますが、最近ではほとんどが人工栽培で一年中市場に出回ります。

低カロリーで食物繊維が豊富な健康食材として昔から多くの人に親しまれていますが、最近では抗がん作用も確認されて新たな椎茸ブームをまきおこしています。

椎茸の旬

旬は年2回訪れ、春3~5月頃と秋9~11月頃です。安いのは春で、量が多く出回るのは秋から冬にかけてです。

最近は人口栽培が一般的で、計画栽培されて1年中出荷されています。

椎茸の産地

生椎茸の主産地は、群馬、茨城、栃木、埼玉などです。

干し椎茸は、大分、宮崎、岩手、静岡などが有名ですが、生椎茸の需要が年々多くなり、干し椎茸産地でも生椎茸の栽培に切りかえるところが多くなってきているそうです。

最近は中国産の輸入も増加しています。

椎茸の種類

生椎茸と干し椎茸があり、干し椎茸は「どんこ」や「こうしん」などと呼ばれますが、これは品種による違いではなく、栽培される環境や収穫時期の違いなどによる取引上での銘柄としての区別です。干し椎茸は従来は天日乾燥で作られていましたが、天日ですと10日以上の日数がかかるため、現在ではほとんどが熱風乾燥されます。熱風乾燥では1日で乾燥することができます。

冬菇・冬子(どんこ)

丸型肉厚でまだ傘が開ききってないもので、表面に亀裂が入っているものの乾燥品を言います。1~2月頃に採取されます。味が良いので出し汁や煮こみ料理、中華料理などに使われます。肉厚なのでもどすのに時間がかかります。

天白冬菇(てんぱくどんこ)別名:花冬菇(はなどんこ)

どんこの中でも傘に白い亀裂が入り、肉厚で形の整ったものを「天白どんこ」と呼びます。どんこの中でも1%もとれない貴重品で椎茸の最高級品とされています。

茶花冬菇(ちゃばなどんこ)

傘の表面に茶褐色の亀裂が入ったもので、天白どんこが雨露にあたったときにできます。

香信(こうしん)

傘が8~9分ほど開いた椎茸を乾燥したものです。晩春か秋の温度が高いころに採れたものです。肉は薄く表面はなめらかで軸は細めです。風味や歯ごたえはどんこに及びませんが、寿司や煮しめなどあっさりとした味付けをしたい料理に向いています。値段も安く、早くもどせて火の通りもよいので日常的に使用します。どんこも収穫時期を過ぎると香信になります。

香菇(こうこ)

どんこと香信の中間時期に収穫した椎茸を乾燥したものです。肉厚や傘の開き具合も両者の中間に位置します。どんこと香信の両方の利点を兼ね備えていて、広範囲の料理に向いています。

椎茸の選び方

生椎茸を選ぶポイント

かさが開きすぎていない肉厚のものが良品です。

軸が太くて短いものが良いでしょう。

傘の裏が白いものは、新鮮なものです。

ひだの部分が黒ずんだものは、少し古くなったか水気を含んだもので傷みやすいので避けます。

傘の色は薄茶色でつやがよいものを選びましょう。

ほどよく乾燥しているものを選びましょう。パック売りされているもので内側に水滴がついているものは避けます。

干し椎茸を選ぶポイント

干し椎茸の値段は色かたちで決まるので、高いほど味が良いというわけではありません。

よく乾燥しているもの、肉厚で軸の短いものを選びましょう。

傘の表面が黄褐色で色つやの良いもの、裏は明るい淡黄色のものが味も栄養も良いものです。

椎茸の調理法

椎茸を使った料理

(生椎茸)
★直火焼きにしてポン酢やしょう油など。
★フライパンで焼いてしょう油で味を整え、バターをからませたソテーに。
★天ぷらや炒め物に。
★鍋料理の具や汁の実として。
★ひき肉やえびのすり身を詰めて揚げ物に。

(干し椎茸)
★煮付けや含め煮に。
★すしや炊き込みごはんの具として。
★あえ物や佃煮に。
★細切りにして炒め物に。
★だしとりに。

干し椎茸の戻し方

水に浸して冷蔵庫の中で一晩かけてもどすのが、旨み成分が出やすい一番正しい戻し方です。肉の薄い香信(こうしん)に比べて肉厚のどんこは戻すのに時間がかかります。

最終的には細かくして調理することの多い椎茸。出来上がりの形にこだわらない場合には、最初に細かく砕いて戻すと水に接する面積が増すために戻す時間は極端に短くなります。

お客様向けの料理などで形にこだわる場合には、1時間ほど冷蔵庫で戻した後、包丁が入れやすくなった頃に細かく刻んで、再度30分~1時間ほど戻してやるとよいでしょう。

ぬるま湯や電子レンジで戻すと、戻る時間は短くなりますが、旨み成分は極端に少なくなります。70度以上の熱湯では旨みが全て抜けてしまうので注意してください。ぬるま湯に砂糖を少量加えることで、戻す時間をより短くすることができ、味もまろやかになります。

軸の部分が一番戻るのに時間がかかるので、軸の部分を触ってみてやわらかく弾力があれば全体が戻っているのを知ることができます。

戻し汁には旨みや有効成分がにじみ出ているので、捨ててしまわずに出し汁などで有効に利用してください。

軸は捨てないで

椎茸の軸はほとんどの人が捨ててしまうようですが、この部分は傘の部分と比べても栄養分や旨み成分にほとんど差も無く、細かく刻んでやると傘の部分と同じように調理して食べることができます。

また、焼いて塩をふると簡単な酒の肴になりますし、しょう油、砂糖、みりんで煮ると立派な佃煮になります。ぜひ有効利用していただきたいものです。

食べ合わせによる相乗効果

干しシイタケの旨み成分であるグアニル酸は、こんぶやしょうゆに多く含まれるグルタミン酸やかつおぶしなどに含まれるイノシン酸との相性が良く、一緒に調理すると旨みが何十倍にも増します。だしをとる場合には昆布やかつおぶしを加えたり、味付けの際はしょう油味にするとよいでしょう。

椎茸の保存

生椎茸の保存

生椎茸の鮮度を保つ秘訣は、かさの内側のひだについている胞子にあります。これを洗い落としてしまうと、すぐに黒ずんで傷んでしまいます。また、適当な湿気を保って低温で保存するのが基本。買ってきたら新聞紙にくるみ、その上からビニール袋で包みます。新聞紙の中では、胞子が落ちないように傘を裏返して軸を上にして並べるようにしてください。そしてそのまま冷蔵庫へ。このまま1週間くらいは保存できます。

日光浴させると保存期間も栄養素もアップ

生椎茸をたくさん買ってきた場合には、広げた新聞紙やざるの上に椎茸の軸を上にして並べ、ベランダなどの日の当たるところで3~5時間ぐらい干してみましょう。干したあとは、新聞紙にくるんで冷蔵庫で保存するようにします。椎茸を日光に当てることでより長く保存できるようになるほか、紫外線の作用でビタミンDが形成されて栄養価も上がります。

冷凍保存も

椎茸は生のまま保存できます。丸ごと冷凍する場合は、やはり傘を裏返して凍らせます。冷凍用パックに入れて1ヶ月はもちます。細切りにしておくと一層便利です。また、しょう油、砂糖、酒、みりんで15分ほど煮て冷凍しておくと、そのままお寿司の具などに使えて重宝します。

干し椎茸の保存

高温と湿気を嫌うので、びんや缶に乾燥剤を入れて冷暗所で保存します。虫が入らないようにきっちりとふたをしておけば、1年ぐらいはもたせることができます。もどしたあとは日保ちしませんので、早めに使いきってください。但し、生椎茸と同じように冷凍保存することは可能です。たくさんもどしすぎて余ってしまった場合は味付けして冷凍保存してみてください。

椎茸の栄養・効能

生椎茸の主な成分

糖質のほか、良質のたんぱく質が主成分で、ビタミン類ではB1、B2、ナイアシンなどが比較的多く含まれます。ミネラル分はカリウムが特に多く、他にはリン、ナトリウム、カルシウムなどです。繊維質が豊富なことも特徴のひとつです。しかし、椎茸が健康食として注目されるのは、これらの成分以外に椎茸特有の物質がいろいろと含まれているからです。

ビタミンDに変化するエルゴステロール

生椎茸に含まれるエルゴステロールという成分は太陽の紫外線に当たるとビタミンDに変化します。ビタミンDは小腸でカルシウムとリンの吸収を促し、強い骨格を形作るのに効果があります。成長期の子供の骨格形成や骨粗鬆症(こつそしょうしょう)の予防または改善に有効です。また、カルシウムには神経を鎮める効果があるので、イライラしたり不眠症の人にもおすすめの食品です。

干し椎茸にはエルゴステロールから変質したビタミンDがもとから多く含まれるために、これらの摂取にはより効率が良いのですが、最近の干し椎茸は天日乾燥せずに乾燥機で機械乾燥しているため、ビタミンDの含有率は昔のものよりも下がっています。このため、生椎茸でも干し椎茸でも食べる前に1時間~半日ほど日光に当ててやるとビタミンDの含有量をあげることができます。日光に当てる際には傘の裏側を上に向けるとより効果があります。

エリタデニンがコレステロール値を下げる

椎茸特有の成分でアミノ酸の一種であるエリタデニンという物質には、血液中のコレステロールを体外に排出して血圧を下げるはたらきがあることがわかっています。このエリタデニンの効力と、豊富に含まれる食物繊維との相乗効果により、コレステロール値を下げる椎茸の効能はより強力なものになっています。

レンチナンが免疫力を高める

きのこ類には人間の免疫力を活性化するβ-グルカンという物質がありますが、椎茸にもその一種のレンチナンという成分が含まれています。レンチナンは副作用の無い医薬品としても認可されている物質で、体内に入った病原体などを発見して免疫体に伝達するサイトカインの働きを正常化し、外敵を攻撃するインターフェロンの生成にはたらいて免疫力を高めます。強い抗がん作用のほか、インフルエンザやエイズウイルス(HIV)の増殖を抑制するはたらきなども徐々に明らかになっています。

ダイエット食として

食物繊維が豊富でカロリーが低い椎茸は、ダイエット食としても注目されています。特に干し椎茸の食物繊維含有量は様々な食品の中でもトップクラスで、40%以上も含まれています。食物繊維は腸内で有用な微生物を増やして有害物質の排出にはたらき、美容の大敵である便秘の解消のほか、成人病などの生活習慣病の予防にも大きな効果があります。

旨み成分は脳に効く

椎茸の旨み成分はアミノ酸の一種であるグアニル酸です。グアニル酸は細胞の核を形成するリボ核酸(RNA)の抗生物質の一つで、新陳代謝を促進し、脳の活動にも書かせない栄養素です。干し椎茸を冷水でじっくり戻し、加熱する際には水から煮出すことでグアニル酸が増えて旨みが増すことがわかっています。

椎茸の歴史

原産地は日本や中国です。

古くから食用とされていたと思われますが、椎茸の名が文献に出てくるのは室町時代の頃からです。きのこの中ではあまり際立った特徴の無い種類なので、他のきのこ類とは区別されずに食べられていたためと見られています。

栽培が始められたのは17世紀の江戸時代からで、発祥の地は九州の豊後(大分県)とも伊豆の天城山とも言われています。ちなみに、大分県に伝わる話では、炭焼きの源兵衛という男が鉈で切りこみを入れたまま放置した木に椎茸が発生したことが、その始まりとされています。

この源兵衛の話のように、木に鉈目を入れて放置し、自然に椎茸の胞子がつくのを待つ方法を鉈目栽培法と言い、昭和に入るまではずっとこの原始的な栽培方法がとられていました。この方法では大量栽培は望めず、その為椎茸はごく最近まで松茸よりも貴重品として扱われていました。

椎茸の栽培量が飛躍的に増えたのは、昭和になり椎茸菌を純粋培養させて種菌(種駒)として扱う方法が考案されてからのことです。戦後、燃料として薪が使われなくなり、それが大都市近郊で椎茸栽培の榾木(ほだぎ)として使われるようになって、椎茸栽培が盛んになりました。

椎茸の豆知識

椎茸の語源

椎(しい)の枯れ木につくきのこ、という意味から「椎茸」と呼ばれるようになったという説が一般的です。ちなみに現在の栽培では、くぬぎやならの木が使われ、椎の木は使われません。くぬぎやならの木を使った方が品質の良い椎茸が多量に取れるためだそうです。

江戸の乾物商から世界に紹介

1878年、イギリスの菌学者バークレイは椎茸に「Agaricus edodes」という学名をつけ世界に紹介しました(後に「Lentinula edodes」と改名)が、これは英国のチャレンジャー号が江戸時代の日本に立ち寄った際、町の乾物屋で買い求めたものがもとになったそうです。この椎茸の標本は今でもイギリスのキュー博物館に保管されています。ちなみに、この「edodes」とは「江戸の」という意味です。