白菜 – はくさい – chinese cabbage
白菜(はくさい)の特徴
西洋のキャベツに対し、東洋を代表する葉野菜です。
淡い緑色をした大きな葉は、周囲がちりめん状に縮れて互いに抱き合うように重なります。大きくなるにつれて白い部分が太く伸びるため「白菜」と呼ばれるようになりました。
やや甘い味はくせがなく、工夫次第で食卓の主役や名脇役となり得る万能選手です。浅漬け,なべ物,餃子の具,サラダ,スープ,炒め物など、料理にも幅があります。カロリー値が低いので、ダイエット食の1つとしても注目されています。
また、大根、豆腐とともに「養生三宝」といわれ、精進料理に欠かせない食材です。
白菜(はくさい)の旬
白菜の旬は11月下旬から2月ごろの晩秋から冬にかけてで、霜にあたると繊維がやわらかくなり風味も増します。また葉の糖分も増えておいしくなります。
しかし、最近では秋から冬は茨城県など大都市圏の周辺で、春から夏は長野県などの冷涼地で栽培され、また、トンネル栽培による春から初夏の収穫も盛んになり、冬野菜から1年を通して手に入る野菜に変わってきました。
白菜(はくさい)の種類
栽培種としての白菜は、野生種から進化した物ではなく、かぶとツケナ(ちんげんさいなどの仲間)の交雑から、中国で生まれたと推定されています。
中国では、山東(さんとう)、北方、南方の3型に大別され、気候と風土の関係から、日本では山東型のみ定着し、分化していきました。
株の形態は、結球性、半結球性、不結球性に分けられ、主体は結球型です。
近年、軟腐病(なんぷびょう)、ウイルス病に強いキャベツの性質や、根こぶ病に強いかぶの性質を取り入れた品種も育成されています。
現在は主な栽培品種だけでも、150種以上あります。
品種
包被型(ほうひがた)
山東系の結球型白菜で、日本でもっとも出回っている白菜です。どっしりした円筒形で、頭部の葉がしっかりと重なり、芯の部分が幅広で肉厚なのが特徴です。球の内部が黄色みを帯びた黄芯型が最近の主流です。春と秋冬の年に2回収穫できる露地栽培が一般的です。特に冬場は甘みが出て、鍋ものには欠かせません。
抱合型(ほうごうがた)、砲弾型(ほうだんがた)
山東系の結球型白菜で、しまりがよく、頭部の葉が重なり合わず、とがった形になり砲弾のような頭部が特徴です。内部の白い軟白型は減少しています。
たけのこ白菜
北方系の長円筒形で、たけのこに似るためこの名がついてます。通常5~10kgと比較的小型で、大きなものは1球25kgにもなります。普通の白菜に比べて水分が少なくて葉肉が堅く、高温で加熱してもくずれないため、鍋物に向いています。明治初年に導入されましたが、定着せず、近年になって再導入されていますが、あまり定着していません。「紹菜(しょうさい)」「北京(ぺきん)」「チヒリー70」などの品種があります。
半結球白菜
胴部がしっかりしまり、頭部は開いています。葉肉は薄く、日もちがします。主に漬物用で、「花芯(かしん)」「あずま山東(さんとう)」などがあります。関東で広く栽培されていましたが、最近は激減しています。
山東菜(さんとうな)
結球して葉先が開きぎみのものから、半結球のものまであります。晩秋頃から出始め、漬物に向きます。
ほかに、山東菜の品種改良型として、愛知白菜が受け継がれています。
ミニ白菜
小人数の家庭でも食べきれるように開発された小型品種です。普通品種が1球3~4kgなのに対して1kg前後で、内部は濃黄色です。味は普通の白菜と変わりません。
ヘアレス白菜
中国南部、台湾に普及している白菜です。葉面に毛がないのでヘアレスといいます。水分が多くやわらかいのが特徴で、サラダ向きですが、あまり出回りません。
オレンジクイーン
キャベツと交配して生まれた中が黄色い白菜です。
白菜(はくさい)の加工品
漬物
塩漬けや甘酢漬けなど、いろいろなバリエーションがあります。
キムチ
朝鮮漬物の総称で、野菜などを薬味や香辛料などを加えて漬けこんだものです。白菜のキムチがその代表格です。
白菜(はくさい)の選び方
胴がよく張っていて、しりが丸みを帯びている、手で持つとずっしりと重量感のあるものを選びましょう。
葉が薄緑色に縮れていて、黄ばみがなく、巻きがしっかりしていて、葉先をしっかり巻きこんでいるものが良いでしょう。
胴の白い部分にみずみずしさとつやがあり、株の切り口がかさついていないものは新鮮です。
カットされている場合は、切り口がみずみずしいものを選び、切り口が茶ばんでいたり、葉の部分が乾いているものは避けて下さい。
カット面は、葉と葉の間が詰まっていて断面が平らなものを選びます。カット後も中心付近は成長を続けるので、時間がたったものは芯がふくらみ、鮮度が落ちている証拠になります。
白菜(はくさい)の調理法
繊維の柔らかさと淡泊な味が持ち味で、和・洋・中華どんな料理にも向き、鍋もの、炒め物、煮もの、お浸し、汁の具、漬物、サラダといろいろな料理に合う野菜です。
生のシャキッとした味わいもさることながら、火を通した時に出るトロッとした甘味も格別なおいしさです。
白菜に含まれるビタミンCやカリウムなどの栄養素は、水に溶けやすい性質をもっています。これらを効果的に摂取するためには鍋ものや肉・魚とのスープ煮など、汁ごと食べてしまえる料理にするのがおすすめです。
ゆでるとかさが減るのでたくさん食べることができます。低カロリーなので減量中の人にもおすすめです。
ゆでたり煮たりするときのコツ
栄養とうま味を逃がさないように細かく切らずにゆでるのがコツです。アクを抜く必要もありません。
汁を少なくし、ふたをして蒸すように加熱すると甘みが出ます。
また、葉も芯も同じ料理に入れたい場合は、時間差をつけて加熱してください。
炒めるときのコツ
水けが出て料理が水っぽくなるので、強火で一気に炒めることがポイントです。
一番外側の葉は捨てる
外側の葉は一番初めに出てくる葉なので、内側に比べると、農薬やダイオキシンを多く含んでいる可能性があります。切ってから水にさらすとより安心です。
部位別調理のコツ
料理に合ったところを使うことが白菜をおいしくいただくコツです。
外側の葉は、煮もの、きざんで炒めもの、クリーム煮やグラタンなどに。
中ほどの葉は、鍋ものや、炒めて八宝菜などに。ゆがいてレモンじょうゆ、ごまじょうゆで食べてもおいしいです。
内側の芯は、蒸しもの、甘酢漬けに。また、せん切りにしてさっとゆで、酢じょうゆにつけて食べてもおいしいです。
切り方のコツ
白菜を縦に割るときには、根元から包丁を入れて手でさくと葉がばらばらになりません。
白菜は、葉と軸の柔らかさが大きく違うことが特徴なので、上手に切り分けることがポイントです。軸は火が通りやすいように大きなそぎ切り(包丁をねかせ、端からなるべく厚みを均一に薄く切る)に、葉はざっくりと切るようにしましょう。
白菜(はくさい)の保存法
4~10月頃に出回る夏白菜は、傷みやすい品種なので、カット売りで必要な分だけ求め、4~5日で使いきるようにします。残った場合は、ラップフィルムできっちりと包んで冷蔵庫で保存してください。
白菜の旬でもある11~2月頃の冬白菜は、長持ちします。
丸ごと数枚の乾いた新聞紙に包んで、凍らないぐらいの冷暗所に、根の部分を下にして立てかけておけば、2~3週間は保存できます。使うたびに外側から1枚ずつはがして使い、冷蔵庫に入れてもじゃまにならないぐらいの大きさになったら、野菜室で保存します。
新聞紙がぬれると傷むので、湿ってきたら取り換えてください、
横にすると重みで傷みやすいので、必ず立てて保存してください。
残ったものはラップフィルムまたはビニール袋にしっかりくるんで冷蔵庫で保存します。
ざく切りして冷凍保存すると便利
ざく切りした冷凍白菜は料理に重宝します。
葉の部分を5cmくらいの大きさに切り、固めの塩ゆでにします。水気をしっかりときり、密閉容器で冷凍します。使うときは、凍ったまま、炒めものや煮ものに使います。2ヶ月位は充分もちます。
白菜(はくさい)の栄養・効能
水分が95~96%ですが、色々な栄養素が微量ながらまんべんなく含まれています。
ビタミンCが比較的豊富です。外側の葉に最も多く、ついで芯に近い部分の葉に多く含まれています。
カリウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、なども含まれています。
他にアブラナ科の野菜(大根、かぶなど)に共通する辛味成分であるイソチオシアネートを含んでいます。
食物繊維も豊富に含まれています。
キャベツと成分が似ていますが、キャベツに比べて糖質が少なく、カロリーが100g当たり(中葉1枚程度)で12カロリーしかありませんので、肥満や高血圧の予防になります。ダイエット向きの食材とも言えます。
白菜には硝酸塩がかなり含まれています。これは胃癌の原因になる物質の一つとされています。ただ、生産地や生産方法によって含有量にかなりの差が出ます。
整腸作用
食物繊維が含まれており、便秘の改善や、大腸がんの予防に効果が期待できます。
塩漬けにしても、ビタミンCは失われず、乳酸菌などのお腹に良い腸内細菌ができるので、整腸効果が期待できます。
風邪などの予防や美肌効果
ビタミンCを多く含み、また、煮た白菜には、体の中の余分な熱を冷ます作用があるので、風邪で熱のあるときには効果があります。
熱に弱いビタミンCは、漬物にすると壊れずに生かされ、こちらも風邪や美肌に効果があります。
ガンや動脈硬化の予防
イソチオシアネートは、発ガン性物質を抑制したりや動脈硬化を予防する効果があるといわれています。また、最近の研究では、発ガン性物質の一つである亜硝酸アミンの吸収や蓄積を抑制するモリブデンという微量元素が含まれることもわかってきました。これらの物質より、ある程度の抗ガン作用が期待できます。
そのほか、食物繊維も取れるので、便秘の改善や、大腸がんの予防を期待できます。
高血圧予防や利尿作用
カリウムには、利尿作用や取り過ぎた塩分を体外に排出するという作用があり、高血圧予防につながります。
一般的に塩(主成分は塩化ナトリウム)を多量に使う漬け物は、血圧が上がるとされていますが、白菜漬けの場合には、白菜に含まれるカリウムがナトリウムを排泄して、塩分を過剰にとるリスクを軽減させます。しかし、くれぐれも食べ過ぎには注意してください。
白菜(はくさい)の歴史・由来
原産地は中国北部で、野生の植物からではなく、蕪(かぶ)と漬け菜(つけな)類が自然に交雑して、栽培種としての白菜の原形ができたと推定されています。
中国では11世紀ごろの「本草図経」に記録があり、現在でも最も栽培量の多い野菜です。白菜の英名も「Chinese cabbage(中国のキャベツ)」といいます。
日本での歴史は以外なほど浅く、初めて入ってきたのはのは1875年(明治8年)です。このときの栽培はあまりうまくいきませんでした。
本格的に普及するのは、日清戦争(1894~1895)、日露戦争(1904~1905)が契機になります。この両戦争の従軍戦士は農村出身者が多く、彼らが現地で白菜を食べてその味に感心し、種子を持ち帰って、各地で栽培されて急速に普及しました。