林檎 – りんご – apple

りんごの旬

年間を通して出回りますが、やはり秋から冬にかけてのものが香り高く、おいしいです。

品種により旬になる時期にズレがあります。

りんごの種類

りんごの品種は世界中で2万5千種以上あるといわれています。日本ではりんご栽培の歴史の古い外国からの品種導入が行われ、これまでに1000種以上が導入されています。その中で日本の気候・風土や消費者の嗜好に合致した品種はおよそ20品種とごく少数です。

りんごの新品種交配は、2種類の花粉を交配育成させるほか、偶然に生まれることも少なくありません。10年を経て突然実がなることもあります。「桃栗3年柿8年」という言葉がありますが、これは種を蒔いてから実をつけるまでの年数をさしていて、りんごも柿に近い年数が必要です。試験を繰り返して新品種としてデビューするまでには、普通20年以上かかります。

昭和の初期に始まった日本における品種改良の成果は近年ようやく現れ始め、早生品種では「つがる」、晩生品種では「ふじ」が主要品種として普及するようになっています。

日本では「ふじ」「ジョナゴールド」「芳明」「つがる」「紅玉」「ゴールデンデリシャス」「千秋」「北斗」「祝」「さんさ」「ハックナイン」「王林」「スターキング」「むつ」「陽光」「アルプス乙女」「国光」「やたか」「家隆」「世界一」「メロウ」「新世界」「秋映」「高嶺」などの生産があります。

品種

祝(いわい)

7月中旬から9月上旬頃まで出回ります。りんごの中で出回り時期が最も早く、夏の青りんごとして親しまれています。アメリカ原産ですが、明治33年の皇太子御成婚にちなみ「祝」と解明されました。甘味があるので未熟でも食べられます。

つがる

8月下旬~11下旬に出回ります。早生種として一番甘い代表品種で、「ふじ」につぐ生産高を誇ります。「ゴールデンデリシャス」が母ですが父は不明。歯ごたえがあり、果汁も多く甘みも適度にありますが、酸味はやや少なめです。日もち性は中くらいです。

さんさ

8月中旬~9月下旬に出回ります。「あかね」の花粉をニュージーランドに送り、「ガラ」と交配した、ニュージランドとの合作新品種です。全面鮮明色に着色し外観がよく、やや小玉で果皮が薄く、丸かじりすると大変おいしいです。甘さと酸味のバランスが、8月の暑い時期に最適です。今後早生(わせ)の代表的品種になるものと期待されています。

紅玉(こうぎょく)

9月下旬~10月下旬に出回る、アメリカ原産の古い品種です。昔はよく出回っていたのですが最近はあまり見かけることが有りません。けれども今もかくれたファンが多く、特にアップルパイ用に最適で、業務用、家庭用共によく使用されます。比較的酸味の強い味で、調理後もりんごの風味が強く残り、クッキングに最適です。蜜も若干入ります。

千秋(せんしゅう)

9月下旬~年内に出回ります。「東光」(「ゴールデン」×「印度」)に「ふじ」を交配した比較的新しい中生種です。名称は秋田市の千秋公園からとられたそうです。果皮が鮮やかな紅色をしていて、ポツポツと黄色い斑点が有るのが特徴です。果肉は固めでしっかりとした歯ごたえが有り、甘さと酸味のバランスがよいりんごです。

ゴールデン・デリシャス

9月~年明けにかけて出回る、世界で一番生産量の多い品種です。甘み・酸味が適度に調和し、香り豊かで果汁も多い優れたりんごです。デリシャス系のりんごは赤系が支流なのですが、この品種は名前でもわかるようにゴールデン色の黄色ががっています。アメリカのりんごの産地であるバージニア州で偶発実生として発見されました。多くの品種改良の親になっています。

スターキング・デリシャス

9月~年明けの3月いっぱいまで出回ります。1921年、アメリカで「デリシャス」の枝変わりとして発見されました。果皮は濃赤色で果肉は黄色く緻密、果汁も豊富で甘みが強く香りも高いのですが、酸味がきわめて少ないのが特徴です。蜜入りもよく食味もきわめて高いのですが、日もちが悪いのが最大の欠点です。

世界一(せかいいち)

9月下旬~10上旬に出回ります。「デリシャス」の母に「ゴールデンデリシャス」を交配した品種で、大きさは700g~1kg位までなり、まさに世界一のりんごです。適度の果汁と香りがあり、また果肉がとても細かく締まっていて、サクサクした歯ざわりが特徴です。大きいわりに日もちが良くて、冷蔵すると3月頃まで鮮度を保てます。

ジョナゴールド

10月上旬~10月下旬に出回ります。母が「ゴールデンデリシャス」、父が「紅玉」(原名ジョナサン)のアメリカ産のりんごです。日本には昭和45年に渡来しました。甘味、酸味が調和し、サッパリしたりんごです。「紅玉」に似た風味です。ジュース、料理用としても優れています。冷蔵すると3ヶ月くらい日もちします。完熟した果実は表面が内分泌物でべたつきのが特徴です。

国光(こっこう)

10月下旬~年明けまで出回る品種です。晩生種で貯蔵性に優れています。昔は大衆品種でしたが、最近はりんご酒、焼きりんご、ジャムなどによく用いられます。果肉が固く、歯切れもよく、伝統的な酸味が特徴です。

王林(おうりん)

10月下旬~年内に出回ります。「ゴールデンデリシャス」と「印度」の交配実生です。果肉が黄白色で、果皮は緑色から黄緑色です。りんごというより梨に近い感じがします。無袋栽培された果実は表面に黒い斑点が有りあまり見栄えはよくありませんが、表面がきれいな有袋栽培ものよりもおいしいとされています。香りが強く、果汁が多く、酸味は少なくて甘味が強い食味の優れたりんごです。

ふじ

10月下旬から11月上旬に収穫され、11月中旬~4月頃まで出回ります。現在生産量、人気とも日本では横綱級のりんごで、世界の品評会でもグランプリを得た優良品種です。「国光」に「デリシャス」を交配したもので、形と果皮は「国光」に似ています。味は「デリシャス」に似ていて甘みと香りが強い点が特徴です。果肉はよく締まっていて歯ごたえがよく、果汁も多くて何ともいえない良好な味です。蜜も入りやすく、蜜入りのものは特に美味しいです。貯蔵性は全品種の中で最も高く、非常に長持ちします。最近は無袋栽培が盛んで、「サンふじ」という名称で人気を呼んでいます。「サンふじ」は、外観や貯蔵性は「ふじ」に劣りますが、甘さや香りにすぐれています。

新世界(しんせかい)

10月下旬~11月上旬に出回ります。「ふじ」と「あかぎ」を交配した新品種です。中玉で果汁も多く、蜜が入り食味も良好です。着色が非常によいです。一口食べた途端に、りんごの風味と甘さが口中に広がる香り高いりんごです。

陸奥(むつ)

10月下旬~年明けに良く出回ります。貯蔵性が高く、CA(空気調節)貯蔵されたものが翌年6月頃まで出回ります。「ゴールデンデリシャス」と「印度」を交配して作られました。さっぱりした味で香りがとても強く、食味は優良です。果実は大きく、500g以上にもなります。無袋の場合は黄緑色ですが、有袋栽培の時にかける袋の色によってピンク系から濃い紅色まで鮮やかな色になります。よく「寿」や「祝」などの文字を着色しないようにして、りんごの皮に黄色で浮かび上がらせて、贈答用に活躍しますが、ジュースや料理にも向いています。

印度(いんど)

11月頃収穫され翌5月頃まで貯蔵されますが、最近はほとんど栽培されていません。日本原産の品種ですが、名前からインド原産と思っている人も少なくありません。昭和40年頃までは主要品種でした。片方の肩がいかり、左右ふぞろいでやや縦長な形が特徴です。肉質はかたく、果汁が少ないのですが、甘味が強くて香りは良いです。

アルブス乙女

「ふじ」と「紅玉」の混植園で発見された偶発実生。北アルプスのふもと松本市生まれのミニりんごで、平均重量は35gと可愛いりんごです。サラダや料理の飾りに利用されるほか、観賞用としても栽培されています。

りんごの選び方

りんごは、実の良く締まったものを選ぶのが良いでしょう。

色で見分けるのは避けた方が良いかもしれません。虫除けの有袋のものはきれいな色が出ていますが、無袋の実の方がおいしさは上です。

実の回りについている白い粉を農薬と間違える人がいますが、この白い粉は実の水分の蒸発を防ぐためのりんご自身の内分泌成分です。

りんごの種類によって違いますが、りんごの上の方だけ赤くて、下の花落ちの部分が青いのはまだ若い証拠です。下まで赤く色づいている実が甘くておいしい実です。

全体に形が良いものが良いでしょう。つるやおしりの周りが引込んでいて変形していないものを選びます。

完熟すると花落ちの部分に穴があいたような空洞が出来ます。たくさん買い置きがある場合などはそういったものから先に食べる方がよいでしょう。

ツルがみずみずしく、はりのあるものは新鮮であり、しなびているのは鮮度が落ちています。ツルが太ければ栄養がたくさん吸収できるため、おいしいりんごの目安になるでしょう。

りんごの調理法

国産のものは、水で良く洗えば皮をむかずに丸かじりできます。

りんごを煮る時は、ホウロウか耐熱ガラスのお鍋を使用します。金属のお鍋では、りんごの酸で黒ずみ、りんごの味や色も悪くなってしまいます。

同じ理由で、すりおろすときにも陶器製かセラミック製のおろし器を使ってください。

変色を防ぐには

りんごは塩水(水1カップに塩を小さじ1/5)またはレモンをかけておくと変色しにくくなります。皮をむいたりんごが変色するのはりんごポリフェノールの成分である”エピカテキン”という物質が酸化することに関係しているためですが、りんごを塩水につけると食塩中のNaイオンがエピカテキンの周りに酸化を促進する酵素からのバリアを作り、酸化を遅らせます。レモンをかけてもりんごの酸化による変色を抑える事ができるのは、抗酸化物質であるレモンのビタミンCがりんごのエピカテキンの代わりに酸化してくれるため、りんごの変色が遅くなるためです。
りんごをすりおろして使う時には、使う前におろし金の表面に塩を少量ふりかけてからおろすようにすると変色しにくくなります。

料理のコツ

野菜ジュースにりんごを加えるとまろやかな味になり、子供にも飲みやすくなります。
りんごは豚肉と相性が良く、いっしょに炒めるとおいしいです。
さつまいもと一緒にに煮たものもおいしいです。

りんごの保存法

りんごは温度差をもっとも嫌うので、家庭では薄めのポリ袋に密閉して冷蔵庫に保存にします。ちょっと冷えた林檎は甘味も増して美味しくなるようです。なお保存に最適な条件は温度が0度前後、湿度が85%~90%だそうです(家庭ではちょっと無理な条件かも)。

「つがる」「芳明」「ジョナゴールド」など夏から秋にかけてのりんごは果実が柔らかくなりやすく長期保存には向いていません。「ふじ」が一番保存性の高い品種です。ふじを1ヶ月以上も保存するような場合は密閉した薄めのポリ袋内にさらに新聞紙を入れて冷蔵庫に入れるのが良いようです。りんごが呼吸して出す炭酸ガスや水分を新聞紙が吸着してくれます。

りんごはエチレンガスを多量に発生させるので一緒に置いてあるほかの果物の熟成を早めて早く痛んでしまうので、成るべく他のビニール袋などに入れて冷蔵庫の野菜室などで保管します。(バナナ、キウィフルーツもエチレンガスを発生させます)

逆にじゃがいもの発芽は防ぎますので、じゃがいもの入った袋にりんごを1個入れておくとじゃがいもの保存に効果があります。

あまりに固くて未熟なりんごは、ビニール袋にキウィフルーツと一緒に入れて、密封し、冷蔵庫に三~四日置いておきます。こうすると、キウィフルーツから出るエチレンガスがりんごを成熟させて、味もまろやかにしてくれます。

りんごの栄養・効能

欧米では「1日1個のりんごは医者を遠ざける」とか「りんごが赤くなると医者が青くなる」などという諺があるとか。日本でもお見舞いの定番として選ばれるなど、身体に良い果実として知られています。

主成分は果糖、ブドウ糖などの糖質です。

すっぱみのもとはりんご酸とクエン酸です。

カリウムなどのミネラル類、ペクチンという食物繊維が豊富に含まれています。その為、特に胃の働きを整える作用や、高血圧防止に効くなどとされています。

最近はりんごポリフェノールによる老化防止やガン抑制の抗酸化作用の効果が確認されてきています。

ポリフェノール効果

赤ワインで一躍有名になったポリフェノールは、りんごにも100種類以上含まれている事が最近分って来ています。このポリフェノールは老化防止や癌細胞を促進させる活性酸素を抑える抗酸化作用の他にコレステロールを減らすという働きがある事も動物実験で明らかにされています。
また、りんごにはポリフェノールの他にエピカテキンも多量に含まれるため、より確実に活性酸素を抑えてくれます。エピカテキンは皮に多く含まれ熱にも水にも強いのですが、空気には弱いため、レモンをかけたり塩水につけたりしてエピカテキンが酸化するのを防ぎます。

整腸効果

食物繊維には、水に溶ける水溶性と溶けない不溶性の2種類があります。りんごに多く含まれる食物繊維のペクチンは水溶性です。元々腸の掃除をしてくれるのは不溶性食物繊維ですが、りんごのペクチンは水分を含むと寒天状に固まり腸内の炎症をおこした粘膜をカバーしてくれる働きがあります。また、悪玉菌の活動を抑え腸内の環境を整えてくれる働きがあります。りんごが下痢や便秘によいといわれるのはこのためです。
ペクチンには悪玉コレステロールを減らして善玉コレステロールを増やすという作用もあります。
ペクチンは安定した成分なので空気にも強く、切っても擦りおろしてもその効果は変わりません。熱にも強いので料理に使っても大丈夫です。
ペクチンは果肉よりも皮に多く含まれているため、皮ごと食べた方が効果的です。
ジュースの場合は、透明なものにペクチンが含まれないそうなので御注意下さい。

高血圧防止

りんごに含まれているカリウムには、身体の中のナトリウムを排出し血圧を下げる効果があります。塩分を獲り過ぎると血管にナトリウムが溜まり、血管を詰まらせて高血圧となります。それから脳血管障害などに発展することもあります。そこへカリウムが入ると、余分なナトリウムを運び出し血液の流れを改善してくれます。1日に1個か2個食べれば十分に血圧は下がってくれるそうです。

疲労回復

りんごに含まれるりんご酸には疲労回復の効果があります。疲労の原因には乳酸という物質が大きく関わっていますが、りんごを食べると体内でクエン酸サイクルが始まり、乳酸を減らす効果があらわれます。

丸かじりで丈夫な歯と歯ぐき

成分のアップルフェロンは歯に虫歯菌をつきにくくし、虫歯予防になるという報告があります。
育ち盛りのお子種におすすめしたいのが、りんごの丸かじり。丸かじりは歯のすき間にたまった歯垢を取り去り、歯を清潔に保つ歯みがき効果があります。また歯や歯ぐきを丈夫にするだけでなくアゴの発達を促します。アゴの発達が遅れると永久歯の並びにも影響を与え、そこから様々な病気へと発展してしまいます(顎関節症、肩こり、頭痛など)。噛む力が弱まりアゴが小さくなっている現代っ子、りんごを毎日食べてしっかりとした歯の育成と健康づくりを。
欧米では「自然の歯ブラシ」とも呼ばれています、育ち盛りのお子様だけでなく、老若男女を問わず、食後のデザートにいかがでしょうか?

美肌効果

りんごはアルカリ性の食品です、また自然の繊維分が多く整腸作用などがあるので、美肌を保つのに大変効果があります。

肥満、糖尿病の予防効果

食生活が充実した現代において過食は現代病ともいわれ肥満成人病のファーストステップになります.この過食症を予防するためには食事の30分前にりんごを一個食べると効果的です。満腹感が得られると同時に、主食の糖質の量が少なく押さえられ、肥満や糖尿病の予防に効果的です。
また、インシュリン不足は糖尿病の一因ですが、リンゴに含まれているカリウムが欠乏するとこのインシュリンの働きが悪くなるといわれます。また、リンゴのペクチンは糖質を吸収するので糖尿病患者の血糖値を下げる働きがあるといわれています。

りんごの民間療法

快便のために

りんごとにんじんを皮付きのままおろし、それぞれのしぼり汁をさかずきに一杯ずつ混ぜ合わせ、朝食30分前に飲みます。

下痢のときには

りんごを皮ごとすりおろしたものを食べるとよいです。(1929年ドイツの科学者モーロが下痢で苦しむ子供達に与えたところ、弱っていた子供達の腸の機能が改善したと、医学雑誌に紹介されています)また、りんごを水で煮てその汁と果実を食べても効果があるそうです。
(ただし、ただの下痢ではないこともあるので、一応は医師の診察を受けましょう。)

疲労回復、高血圧、めまい、風邪に

りんご酢とはちみつを大さじ2ずつコップに入れてまぜ、水を適量加えます(バーモントドリンク)。これでうがいをすると、のどの痛みがとれます。

熱によるのどのかわきに

りんごをすりおろして食べます。

慢性頭痛に

りんご酢と水を同量、容器に入れてあたため、湯気が出てきたら、顔をゆげにあてます。

美肌に

石鹸で洗顔後、りんご酢とはちみつを大さじ1ずつ入れた水でもう一度洗顔します。

りんごの歴史・由来

原産地は中国の天山山脈やヨーロッパ東南部のコーカサス地方で、そこからヨーロッパ、さらに清教徒たちによってアメリカへ伝わりました。

りんごが最初に栽培されたのは新石器時代とされています。8000年ぐらい前の炭化したりんごがトルコで発掘されています。紀元前1300年にはナイル川デルタ地帯に果樹園があり、ギリシャ時代にはりんごの野生種と栽培種を区別し、接ぎ木で繁殖させる方法が書かれ、ローマ時代になるとりんごの品種が載った本が出版されています。その当時、すでに人々は用途によっていろいろな種類のりんごを使い分けていたようです。

りんご栽培に熱心だったのはアングロサクソン民族です。アメリカでのりんご栽培のもとになった品種は、ヨーロッパからの移民によってもたらされました。フランス、オランダ、ドイツ、そしてイギリス人が、自分たちの祖国から様々なりんごの種を持ち込んでは蒔いたのです。さらに西部開拓時代には、地球の磁気を利用して地下水脈を探る道具にりんごの枝を使い、井戸を掘り、家の庭には必ずりんごの木を植えて、街を作りました。

日本で“りんご”の名が記録されたのは平安時代の中頃(918年)で、中国から渡来した「和りんご」とか「地りんご」と呼ばれる粒の小さな野生種でした。

今日のようなりんごがつくられ始めたのは、まだ130年ほど前のことです。1871(明治4)年にアメリカから75品種を輸入し、内務省勧業寮試験場が中心に苗木を全国に配布して試作が行われました。その結果、りんごは信州や東北地方などの比較的冷涼な地域に適していることが分かり、新作物として普及しました。冷害でお米が実らない年でも立派に実をつけることができ、寒冷地では重要な作物です。

はじめは和りんごと区別するために「西洋りんご」とか「苹果」と呼んでいましたが、品質、果実の大きさが優れていたために、和りんごに代わって栽培が広がり、やがて単に「りんご」と呼ぶようになったのです。当時の新聞は『目方39匁、周囲7寸4分程。じつに管内未曾有の大なるものにして、味わい殊に美に、日本種類とは比較し難し」(明治10年8月19日、北斗新聞、青森)と報じています。

しかし、太平洋戦争が勃発してから、りんごは国民食料と認められず、政府は作付統制令を発布、増殖の禁止や伐採の命令が出され、また労力や物資が不足して、りんごづくりには大きな打撃となりました。

終戦後、荒れ果てたりんご園の建て直し運動が盛んに行われ、また、接木法による品種更新、花粉の交配育成による新品種の研究が展開され、高級りんごづくりへの試作も注目されてきました。「王林」「ふじ」「つがる」などが主力品種として台頭します。

人間の歴史が始まった時にはすでにりんごが存在していました。りんごが人間の生活と深く関わってきたことは、世界中に存在するりんごにまつわる逸話や諺、俗語の多さからも分かります。

アダムとイブの話にも出てきますし、またウィリアム・テルの息子の頭にりんごを乗せて矢を射る話や、ニュートンはりんごが地面に落ちるのを見て万有引力の法則を発見したように、古くから欧米では親しまれてきた果実です。

りんごの豆知識

冷やすとおいしいのは?

りんごの甘味は、りんごの葉の炭酸同化作用によって作られます、葉が太陽の光によって、水と炭酸ガスから糖分を作り、それが果実に貯まって甘味が生まれるのです。この果糖にはα型とβ型があり、果糖は冷やすとα型からα型の3倍もの甘さのあるβ型に変化します。その為冷やして食べる方がりんごの甘味が強く感じられるのです。しかし、人間の舌はあまりに冷たくすると感覚がわからなくなってしまいますので、10度前後に冷やすと、一番おいしく感じられます。

表面がべたべたしているのは?

りんごの皮に白い粉のようなものが付着してたり、ベタベタする場合があります。これは果実が果実自身を守る為に分泌している物質(ろう質のもの)です。熟するにつれ、リノール酸やオレイン酸がふえて皮にふくまれる物質をとかし、油をぬったようなべたついた状態になって果実を保護し、水分が蒸発するのを防いでいつまでも新鮮さを保ます。特に「つがる」や「ジョナサンゴールド」などがそうなります。昔、よく林檎をピカピカに磨いている果物屋さんがありましたが、これは良くなかったのですね。

無袋りんご

袋をかけないで栽培したりんごです。病害虫や風による枝ずれを防いだり、りんごの色をよくする為に、袋をかけて栽培した有袋りんごが多かったのですが、そうすると果実の糖分も低下してしまい、しかも高価になります。「ふじ」や「つがる」などは袋かけをしないと着色が遅れるなど見た目は少々劣りますが、太陽の光をたっぷり浴びて育つので糖度が高くなり、食味もよくなります。

りんごの蜜って?

りんごは収穫近くになると、光合成によって葉でつくられたでんぷんが急激に糖に変化し、果実に運ばれるようになります。大量に運ばれた糖(ソルビトール)が、果実の水や栄養の流れる通路(維管束)からあふれて、細胞と細胞の隙間にあふれ出た状態になります。この様子をあらわしたのが密入りりんごで、中心部分が黄色く透き通るようになり、良く熟したおいしいりんごの証拠となります。
実際には蜜(ソルビトール)が特に甘いということはないのですが、蜜が入っているということは、「太陽の光をいっぱい浴びて育った」、「朝夕の気温の差が大きい地域(味に深みがあるおいしい林檎栽培に適した地域)で育った」「完熟収穫した」という林檎の目安になると言えます。
蜜の入り方は天候と深い関係があります。基本的に蜜は低温による生理的な現象ですから9月、10月、11月と冬に向かって順調に気温が下がった年は蜜がたっぷり入ります。蜜は品種によって入りやすいものと、そうでないものがあります。一般に蜜入り林檎と呼ばれるのは「ふじ」です。りんごの蜜は収穫後、少しづつ散ばり、なくなっていき、1月を過ぎますとなくなってしまう場合があります。蜜自体には甘さがなく、完熟収穫したという目安のため蜜が散らばり無くなってしまっていても美味しいのです。

御菓子作りに向くりんごは?

「紅玉」「ジョナゴールド」「国光」など、甘すぎず、ほどよく酸味が含まれているものを選んでください。焼いても、ほんのり酸味が残るので、お菓子の甘みとマッチするからです。もちろん、なければ他の種類ののりんごで代用できます。
日本ではなかなか手に入らないですが、「グラニースミス」もケーキに適しています。見つけた場合はケーキにチャレンジしてみてはいかがでしょうか?

バラの香り

りんごはバラ科の植物だってご存知でしたか?ですからバラの匂いが強い「ローズハスク」という品種もあるんです。香りがいい果実だというのも納得できますね。