メロン – melon

メロンの特徴

メロンとは、ヨーロッパ型の網(ネット)メロン、カンタループ、小アジア型の冬メロン(ウインターメロン)、東アジア型の雑種メロン、白うり、まくわうりの総称ですが、通常日本でメロンという場合は白うりとまくわうり以外のものをさします。

昭和30年頃までは高級果実で、一般庶民の口にはなかなか入らなかったのですが、プリンスメロンの登場を境に大衆向けの品種開発も進み、価格は2極化しています。

カリウムなどの成分が高血圧の予防などに効果があり、糖質が即効性の高いエネルギー源になるので、病中のお見舞い品としても定番になっています。

食べごろの時期が短く、それより早くても遅くても味が格段に落ちてしまうので、注意してください。

メロンの旬

栽培技術の発達により、高級品は一年中出まわっています。

高温多日照を好み、夏の5~8月頃が本来の旬で、露地ものはこの頃のものが最も風味が良いとされています。

メロンの種類

網メロン

皮がひび割れて大きくなる種類で、裂け目からでた分泌液がコルク質の層になり、網目状の果皮になります。品質が安定していることや贈答品に使われることから、近年需要が伸びています。

アールス・フェボリット
(別名)マスクメロン

網メロンの代表品種です。果皮は緑色で全面に美しい網目模様がでています。緑色の果肉は多汁で甘く、麝香(じゃこう)の香りが強いので、フランス語で麝香を意味する"Musk"からマスクメロンと呼ばれています。品質が安定していることから、近年高級果物として贈答用の利用が伸びています。

アンデス

アールスとコサック、ハネデューなどの雑種で、果皮が灰緑色から黄緑色になり、こまかい網目があります。果肉は締まっていて風味も良好です。味と香りがマスクメロンに近く、小ぶりで値段も安価であることから、マスクメロンの大衆版として需要が伸びており、ハウス栽培の中心品種となっています。名前のアンデスは南米のアンデス山脈には関係なく「安心ですメロン」が短くなってアンデスとなったそうです。

アムス

やや楕円の球形で果皮の緑色が濃く、溝状の縦縞と粒状のあらい網目があります。果肉は淡緑色で甘みが強くて多汁です。オランダのアムステルダムから来たのでこの名があります。アンデスメロンとともに、網目メロンの代表品種です。

夕張キング
(別名)夕張メロン

一般に夕張メロンと呼ばれており、北海道の夕張市とその周辺で栽培されています。赤肉系のスパイシーキャンタロープとアールス・フェボリットとの交配品種です。大玉で網目が細かく、果肉はきれいなオレンジ色で甘みが強く多汁です。鮮やかなオレンジ色は緑黄色野菜に多く含まれるカロチンの色です。

カンタループ
(別名)アメリカンカンタループ

サマーメロンの代表品種でアメリカで広く普及している品種です。果皮は茶色みを帯びて粗い網目があり、果肉は黄色から淡緑色の多汁で麝香の香りがあります。軽い甘さが特徴でオードブルなどにも用いられます。尚、ヨーロピアンカンタループと呼ばれるものは南ヨーロッパに広く分布しているまったく別種のメロンで、こちらは小型で表面にいぼや溝があります。カンタループというのはイタリアにある城の名前だそうです。

クインシー

網目型のハウスメロンで、果皮は灰緑色、果肉はオレンジ色です。甘味も果汁も豊かで、品種改良によって日持ちもよくなり、最近急速に栽培量が伸びています。

クラウンメロン

静岡県西部、天竜川以東で栽培されるマスクメロンで、クラウンはその銘柄名です。アールスフェボリット種の中で特に優秀とされる品種を選定して温室栽培されています。

そのほか網メロンには、ふかみどりコサックグリーンパール真珠などの品種があります。

網なしメロン

プリンスメロン

日本のまくわうりとヨーロッパのカンタロープメロンを交配して生まれたもので、網なしの代表品種です。現天皇陛下ご成婚の1959年に発表されて大人気を博し、その後の大衆メロン開発の先駆けとなりました。腰高球形で果肉は果皮の近くは緑色、中心はややオレンジ色をしていて強い甘みがあります。昭和50年代にはメロン類の生産量の2/3を占めていました。現在は他の品種の登場もあって全体の30%程度ですが、大玉化の傾向があります。

ハネデュー

代表的なウインターメロンで貯蔵性があります。1個2kg前後の大きな球形で果肉は淡緑色、蜂蜜のようなねっとりした甘みがあり多汁です。名前は"honey
dew"(蜂蜜のしずく)からきています。多湿な気候に適さないので日本での栽培は少なくアメリカヤメキシコからの輸入物が主で、網なし種の中では高級品として扱われています。

ホームランスター

ハネデューの白色と緑色の雑種で、細長い形をしており、果皮は乳白色、果肉は白色で香りはあまり強くありません。淡白で上品な甘さと柔らかい肉質が特徴です。

白雪

白色のまくわうりとハネデューなどの雑種です。縦長の球形で果皮も果肉も乳白色、歯ざわりがよく爽やかな甘みが特徴です。

キンショウ

まくわうりの黄色種とスペインメロンとの雑種です。やや縦長の球形で、果皮は鮮やかな黄色、果肉は白色です。肉質は少しかためですが歯ざわりがよく、淡白な味わいが好まれています。

エリザベスメロン

果皮は滑らかな橙黄色、果肉は白色で厚く、香りがよい品種です。上品な食味が好まれています。

パパイヤメロン

スペイン系の品種で、表皮に黄色と緑色のすいかに似た縦縞が見られます。果肉は白くて歯ざわりがよく、瓜に近いさっぱりとした味わいが特徴です。

そのほかの網なしメロンとして、アイボリースーパーなどの品種があります。

メロンの加工品

ほとんどは生食されますが、アイスクリームやシャーベット、ジュースなどにも加工されます。

3~4cm小さな未熟果は「小メロン」と呼ばれ、やわらかいけれども歯ごたえがあり、ぬか漬け、かす漬けなどの漬け物や、砂糖漬けなどに加工されます。

メロンの選び方

網メロンは、ネットが盛り上がり、均一に張っているものがよいでしょう。品種によっては密に張るものもあり、それぞれの特徴に合わせて選びます。

網なしメロンは均整のとれた形で、変色や斑点、濃い筋などがないものを選びます。

果柄は太くて変色していないものが甘くておいしいものです。

きれいな球状で、持ってみて重めのものが肉厚で多汁です。軽いものは種の部分が多い可能性があります。

皮に傷、傷みがないよう表面をよくチェックしてください

花落ち部と呼ばれるお尻の部分は、大きく飛び出してなく小さいものが良品です。1円玉の大きさが目安です。

メロンの食べごろ

店で売られているものは未熟なので、買ってきてすぐには冷蔵庫に入れずに常温で追熟してから食べるようにします。低温保存では熟成しません。

マスクメロンなどの高級メロンでは、食べごろの日付けがついているものが多いのでそれを目安にします。マスクメロンでは、通常、採果日から数えて7~10日で食べ頃になるそうです。

芳香が強くなり、お尻の花落ち部分を静かに押すとやわらかく感じる頃が食べごろです。

メロンをポンポンと爪ではじいてみます。高く澄んだ音ならまだ未熟で、低く濁った音になると食べごろです。

つるから切り離した部分が青くみずみずしいのは未熟で、乾燥していると食べごろです。

メロンの食べ方

常温で追熟して食べごろになったら、食べる2~3時間前に冷蔵庫(5~8℃)に入れて冷やします。いくら冷やしても冷たさは同じ、冷やしすぎは味がおちます。

くし型に切って種を取り除き生食するのが一番ポピュラーな食べ方です。

甘みの足りないものや味が淡白なものは、ブランデーやウイスキーなどを少しかけてみましょう。

生ハムとよく合うので、果肉をハムで巻いてレモン汁やブランデーをかけてオードブルにします。

安く出まわるプリンスメロンやアンデスメロンで、運悪く水気があまりなく甘みの薄いものに出会ってしまったら、そのまま食べるより、ジャムにしてみましょう。

フォークなどで適当につぶして凍らせると、サクサクのシャーベットになります。そのまま食べてもおいしいですが、シャンパンやワインに浮かべてもOK。

一口大にカットして、好みの甘さの砂糖水でさっと煮たものを冷凍すると、翡翠(ひすい)色のちょっと高級なデザートになります。

スプーンで丸くくりぬいたものを、アイスクリームに添えて食べます。カラメルなどをかけてもGood。

よく熟したメロンを半分に切って種を出したものにブランデ-を半分ぐらい注ぎ、ラップをして3~5時間冷蔵庫で冷やした後でスプ-ンで混ぜながら食べます。

メロンの保存法

食べごろを過ぎたら保存はききません。たくさんあるときは、メロンジュースやシャーベットにして保存するとよいでしょう。

残ったメロンは、種の部分を取り出し、切り口をしっかりとラップで包んで冷蔵庫の野菜室へ入れておきます。2~3日で食べきりましょう。

メロンの栄養・効能

メロンの甘味成分は、ブドウ糖や果糖、ショ糖など、酸味の方は、クエン酸やリンゴ酸、酒石酸などの有機酸です。

ミネラルとしては、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、ナトリウム、鉄が主なものです。中でも主成分はカリウムです。また品質によって多少差がありますが、カロチンとビタミンCも比較的多く含まれています。特にオレンジ色の果肉のものはカロチンが多く、果実の中でも含有量は群を抜いています。

メロンには水溶性の食物繊維であるペクチンが多く含まれ、それが滑らかな舌触りを与え食味をよくしています。メロンを収穫後追熟させるのは、細胞中の不溶性のプロトペクチンを、可溶性のペクチン酸などに分解し、果肉を柔らかくするのが一つの理由です。

今話題のGABA(ギャバ:γ-アミノ酪酸のこと)が多く含まれ、高血圧の予防に効果があることがわかっています。GABAは特に温室メロンに最も多く含まれていて、これは有機成分中心の肥料、隔離ベット栽培などの独自の栽培技術に関係していると見られています。

高血圧の予防に

前述のGABA効果のほかに、豊富に含まれるカリウムが体内の余分な塩分の排泄に役立ち、また90%を占める水分の利尿効果との相乗効果もあって、高血圧の予防や肥満防止に大変効果があります。食後のデザートのメロンは単に口を楽しませるだけでなく、余分な塩分の排泄と肥満防止といった役割を担っているのです。

コレステロール軽減に

メロンに多く含まれるパントテン酸は、分解された脂質の代謝を調整して、コレステロール低減、脂肪蓄積防止効果があるといわれています。

脳血栓や心筋梗塞などの予防

名古屋市内の生協と椙山女学園大学が行った共同実験で、日常食べる主な食材について血の固まりやすさを抑える働きが点数化されたものが発表されていますが、野菜・果実の中では、ラディッシュ、トマト、長ねぎ、春菊、ホウレンソウ、ニラ、にんにくなどと並んで、マスクメロンがトップクラスの100点とされています。

ペクチンなどの食物繊維がコレステロール値を下げる作用をし、また、アデニシンという物質の血液凝固を抑制するはたらきで血管がきれいに掃除され、脳卒中や動脈効果が予防されます。

美肌効果

ビタミンや繊維質が多いので、便通をよくし、肌あれにも効果があります。

お酒を飲んだときに

お酒を飲んだ翌朝などもメロンをタップリとると、利尿効果で早くアルコール分が抜けます。

抗ガン性

メロン独特の甘い香りはテルペンによるもので、テルペンには抗ガン作用があるとされています。

アレルギーに注意

メロンはアレルゲンになる可能性があるので注意してください。口の中でチクチクしたり、違和感があるときはアレルギー反応の前触れかもしれません。

メロンの歴史・由来

古代エジプト、中央アジア、中国などで紀元前から作られていたようで、原産地には諸説がありますが、最近遺伝子研究から中国原産説が急浮上しています。

日本でも有史以前から栽培されていて、全国の縄文時代の遺跡からまくわうりの種が発見されています。

網メロンが温室栽培により発達したのは16世紀のイギリスからで、アメリカへも伝えられました。

日本へは、西洋種のメロンは明治中期に導入され、また明治後期にはイギリス系の温室メロンが導入されて、このころから本格的に栽培がはじまりました。アールス・フェボリットは明治30年頃に「福場苺」で有名な福羽逸人博士によって新宿御苑で初めて試作され、大正6~7年頃から市場に出回るようになっています。

大正以後、高級果実として一部の上流階層にしか口にできなかったメロンが庶民に近づいたきっかけとなったのが、昭和37年に皇太子ご成婚にちなんで発売された「プリンスメロン」です。当たり外れのない甘さで、たちまち日本国中を席捲し、この煽りを受けて昔ながらのマクワウリは姿を消してしまいました。

以後つぎつぎと新しい品種が生み出され、栽培法も色々と工夫を重ねて、現在では日本のメロンは名実ともに世界一の品質を誇るまでに成長しています。

メロンの豆知識

メロンの語源

メロンという名前は、ギリシャ語の"melopepon"(りんごのようなうり)が語源だそうです。

1本に1果

「アールス・フェボリット」などの高級メロンは、養分全てを集中して大きく結実させるために、1株に1個を残して、残りの実は小さいうちに摘みとってしまいます。また温度や湿度、水などの管理を徹底しなければならず、ガラス製の温室にしか育たず、栽培行程も複雑で、最後は何度も玉ふきをして表面を美しく仕上げます。このように大事に育てられる高級メロンは、手間暇のかかった芸術品に例えられます。

高貴な生まれ

それにしても高い最高級メロン、桐箱入りの極上品は2万円以上するものもあります。なぜそんなに高価なのでしょうか?その一つの理由は日本での栽培黎明期に見出せます。
温室メロンは、明治天皇の台所を賄っていた新宿御苑の福羽子爵が、イギリスから導入したのがはじまりですが、それ以後、大隅、岩崎(三菱)などの大富豪の農場にのみ広がり、栽培されるようになりました。この名残から、今でも温室栽培メロン「アールス・フェボリット」種は、高価格で取り引きされているのだそうです。名前からしてそうですね(アールス・フェボリット=伯爵の好み)。ちなみに本家の温室メロン種はECの自由貿易体制下でほとんど滅亡しています。サッチャー首相が来日したときに本国で食べられないメロンを食べて大感激したとか...。現在ヨーロッパで流通しているのはスペイン産の露地ものが多いそうです。

つるがついてるのはなぜ?

メロンのつるは果硬といい、業者のあいだではアンテナなどとも呼んだりするそうですが、これは東京市場の卸売業者が、高級温室メロンとまちがえないように、露地・ハウス産のメロンのつるを強制的にもがせたのが始まりだそうです。

メロンのネットはどうしてできる?

網目メロンの果実は、生育途中で表皮部分の成長が止まって固くなりますが、果実自体は肥大し、この時に表皮にヒビ割れができて、この傷を塞ぐために結合組織が発達して網目となります。人間の体に例えれば、傷を修復するかさぶたのようなものです。交配後15日位で、はじめに縦、次に横にひびが入り、約1週間でネットの形成が終わります。果実が硬くても柔らかくてもよいネットは入らず、ちょっとでも管理ミスがあると、網目がきれいに出ないそうで、高級メロンではネットの美しさもメロンを評価する上では重要な要素となっています。でもよく考えてみると、傷あとを評価するなんてちょっとおかしな気もしませんか?

マスクメロンは縁起もの

マスクメロンは、つるが「鶴」、表皮が「亀(の甲)」を表す縁起の良い果物とされています。お祝いの席には、わざとツルの一部を残して切ったものを出されたりします。刃物で表皮に傷をつけるとそのままネットになり、「祝結婚」「寿」などと祝詞を入れた商品も見かけます。

メロンパンの由来

菓子パンの中でも人気のメロンパンは、大正時代には存在していたそうです。けれども、なぜメロンパンと呼ばれるようになったかについては諸説があり、今ではわかりません。

  • パン生地の上にかける「メレンゲ」がなまった。
  • 高級果実のメロンにあやかって、わざと表皮にひび割れのあるパンを作った。
  • ひび割れた模様がメロンに似ていたことからそう呼ばれるようになった。
アンデスメロンはアンデス産?

マスクメロンよりちょっと網目が粗いアンデスメロン。マスクメロンよりは値段が安いですが、味はあまり区別がつかないほどおいしいです。このアンデスメロン、アンデス地方の産物と思われがちですが、実は日本産なのです。ある種苗会社が品種改良して育成したもので、農家が「安心して」作れて消費者も「安心して」買えるということから、「安心ですメロン」を略して「アンデス」と名付けたそうです。

温室メロンの等級

市場では、通常、農作物に対して、秀、優、良などの格付けがされますが、本場の静岡産メロンの等級は、富士、山、白、雪、という呼び名で格付けされるそうです。